週刊ヤングジャンプ・中山敦支『ねじまきカギュー』 連想まみれのオリジナル!

春の嵐に先駆けて、漫画雑誌・週刊ヤングジャンプに
物凄い台風がやってきました。
鬼才・中山敦支先生による新連載『ねじまきカギュー』です。
意味もなく、作中の廻転と台風の渦状をかけていますが(笑)
その表現も誇張ではない…
中山敦支という作家のポテンシャルを感じさせてくれる、
素晴らしい作品に仕上がっています!
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中山敦支先生と言えば、昨今の週刊少年漫画打ち切り作品の中で
図抜けた大爆発作品である(褒めてます)
週刊少年サンデー『トラウマイスタ』の作者として知られています。
僕が居座らせてもらっているサイト「漫研」さんで
長年に渡り、毎週必ず週刊少年漫画誌の「一番」を決めるという
今週の一番」なる企画があるのですが、

6月第2週  トラウマイスタ 最終話 和らぎへ…
6月第1週  トラウイマイスタ 第46話 ありがとう
5月第4週  魔王 第93話 魔王
5月第3週  お茶にごす 第99服 距離
5月第2週  お茶にごす 第98服 いい人
5月第1週  トラウマイスタ 第42話 ピカソはシエナにスジャータの面影を見るか?
4月第4週  月光条例 第12条[赤ずきん]⑨赤ずきん、炎の中へ
4月第3週  ベイビーステップ #70 思わず・・・・
4月第2週  GE~グッド・エンディング~(作・流石景)
4月第1週  魔人探偵脳噛ネウロ 第199話 死【し】
3月第4週  トラウマイスタ 第37話 覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ…


(この時期サンデー凄いなぁ。
チャンピオン黄金期と入れ替わりのピークだったのか)

終盤一気に一番を取りまくっている事からもわかる通り
(正直、これでもかなり抑えています。
個人的にはアインシュタインが登場した週=4月4週
が、漫画のネームとして究極だと思います)
最終盤に物凄いエネルギーを発散し、僕らを虜にした、伝説の漫画です。

単純に言ってしまえば、37話の直前あたりで
打ち切りという、展開の風呂敷を「巻く」
必要性が生まれたと思うのですが、
それによって生まれる「惜しい」という気持ちを上回るほどの
圧倒的なまでの「打ち切りによって生まれるエネルギー」が発生。
端折られた展開を悔やむより、この余命宣告によって
開き直って作品のテーマ、最も描きたいものに直線で向かった結果
その、端折られた諸々への悔いを吹き飛ばしてしまうような
力強い意志と画力に裏打ちされたスピード感がそこに爆誕。
思い出してみても鮮烈な、
週刊少年漫画誌を追う愉楽が凝縮されたマジック・タイムでした。
全5巻と短いことですし、是非一読をオススメします。
なんなら最終巻だけ読んでみても…勿体無い読み方ではありますが
「それが週刊連載である」と認識さえすれば、
そこに魔法が宿っている事は理解できるでしょう。

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連載当時から、僕らの話題は中山敦支という作家さん、
彼の「次」に向かっていました。
(もう、トラウマイスタが巻いているのは明らかだったので)
リビドー全開、魂を燃焼させるような話を描き続ける彼が
生き急いでいるとしか思えないような『トラウマイスタ』を経て
まだ漫画が描けるのか、描けるとしてどんなものを描くのか…

そういった、作家的興味を最も喚起させる人として
中山敦支先生の名前は記憶されていました。
そして今回、サンデーからジャンプ畑に所を変え…
というか、もともとジャンプ畑の方なので、円満復帰なのかな?
『ねじまきカギュー』と相成ったわけです。
読んだ印象としては、「中山敦支=トラウマイスタではなかった」。
すでに、連載前に描かれた読切版『ねじまきカギュー』や
ミラクルジャンプでの読切『禁断ワンダーラバー』
などでも感じていた事ではありますが、
彼の才能は『トラウマイスタ』の超新星爆発だけに留まるようなものではなく
普通に、一個の「中山敦支という才能」として、普遍性のあるものでした。
今はまだ、「トラウマイスタの中山」ですが。やがて
「『中山ワールド』の極みの1つ、トラウマイスタ」になる。
そんな可能性を感じさせてくれる、心地良い熱に溢れる第1話でした。

読切も良かったのだけれど、
やはり、この才能は連載というライヴの熱に乗せて読みたいものです。

『ねじまきカギュー』の物語を簡単に説明すると、

主人公・葱沢鴨(カモサワネギ。カモがネギ背負ってくる)
は女性にモテまくる余り、不幸も呼びこむ「女難体質」の人。
そんな彼を守る為現れた、一見少年の「鉤生十兵衛」は
実はカモネギ先生に救われた過去を持つ幼馴染で、
弾性ある、女体の身体しか生み出せない廻転エネルギィの秘拳
「南家螺旋巻拳」を使う、見目麗しいキュートなシャイ・ガールだった!
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そんな衝撃のボーイミーツガールがもたらす、愛と闘争の物語。

なのです。読んでいて、一番刺激を受けたのは
中山先生は、己の出自に対する衒いが全くない事。
しかし同時に、そこに従属もしていないという事です。
それを象徴するのが、まずこの冒頭シーン。

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…うん。
どこをどう見ても
漫画史に残る傑作『ジョジョの奇妙な冒険』の1部「メメタァ」に思えます。

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そして、螺旋巻拳が標榜する廻転エネルギィの理論も
ジョジョシリーズ最新作
『スティール・ボール・ラン』の爪弾が持つ
無限の回転エネルギーに相当する。

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中山先生の、荒木飛呂彦先生(JOJO)からの影響は明らかです。
それは、かの『トラウマイスタ』も
己の精神的外傷(トラウマ)を具現化させる、
ジョジョの奇妙な冒険「スタンド」に連なるアイデアだった事からも明らかでしょう。
「悪とは何か」を規定する(この作品では「愛に背く」)のも、とても「らしい」。

ただ、別に僕はそんな、両作を知るものなら誰もが気付く事を
さも鬼の首を取ったかのように、言いたいわけではないのです。
「ここまで露骨な連想をさせながら、
そして相手が傑作中の傑作である『ジョジョ』にも関わらず、
屈しない『ねじまきカギュー』の、いや中山敦支先生の
オリジナリティこそが、とんでもない」という事が言いたいのです。

中山先生は、作中のセリフで「○○みたい」と
諧謔も含んだ引用宣言を行うようなタイプではないと思いますが、
しかし画でソレを隠す気持ちは、全くと言っていい程ない。
あまりに明確な使い方が、知識ひけらかしの衒学…
一種のスノビズムから、逆に解き放たれているという点では
現在放映中の山本寛監督アニメ『フラクタル』に通じる印象もありますが
その型から繰り出されるオリジナルの熱量が、
そこいらの同系統の作品とはまるで違う。
『ねじまきカギュー』が、中山先生が改めて思い出させてくれるのは
漫画は構造や展開のみに非ず、という当たり前の事実。
画が、そこに迷いなく乗るまっすぐな主張が
上記要素など鼻で笑い飛ばすほどの、強烈なエネルギーになるという事実。

こんなに、他作品や他作家を連想させる人・作品もそうはない。
けれど同時に、こんなにオリジナルと感じる人・作品もそうはない。
くだらないオリジナル・パクリ論争を因果の彼方に吹き飛ばすほどの
峻烈なマイ・ウェイの風…ヤングジャンプには、すでにこの道の先人
柴田ヨクサル先生が『ハチワンダイバー』を連載しているわけですが
それより一世代あと、引用やメタに溢れた世代の作家と思える
中山敦支先生が、結果ヨクサル先生と同じ地平を見せてくれるのは
とんでもなく痛快ではありませんか。
真似にならないように、借り物にならないように…
気を使い、縮こまり、フキダシ外で照れ笑いのように自分で宣言する作品たち。
しかしオリジナルには、こんな立ち位置からでも辿りつけるのだと。
中山作品を、ねじまきカギューを読んでいて最も心震えるのは
その希望、その事実です。

同様の事を、画を言葉に変えた分筆の世界で行っている人…
西尾維新先生とのリンクが、
荒木先生とのリンク同様に強く張られるのも、必然といった所でしょうか。
ともにジョジョの影響を色濃く感じさせるし、
その当然の帰結として、構造そのものへの疑念や
そこから立ち上るテーマ化・設定化という自意識が強い。

例えば上記『トラウマイスタ』のトラウマ能力具現化システムは
(主人公ピカソは恐怖の吐き気、ライバルダ・ヴィンチはその名の通り
 おそらく万能・全能感という空虚さからくるトラウマ…)
現在、西尾維新先生が週刊少年ジャンプで手がける
『めだかボックス』のマイナス(過負荷)と相似関係にあるでしょう。
それを力に転化する、というプロセスを経るのがトラウマイスタなら
そのものが力で差はない、というのがマイナスとでも言いましょうか。

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本作の主人公、カモネギ先生の「女難体質」というものも
古今、ラブコメ系・ハーレム系作品の主人公ならば
デフォルトのように背負っているようなもので、明文化の必要もないのですが
それを敢えて「設定(体質)」化する。
そんな所にも、
僕は両氏に近い感性近い世代を観てしまって仕方がありません。
ミラクルジャンプの読切『禁断ワンダーラバー』前編の読み味も、
僕には幼馴染さくらちゃんが、『化物語』シリーズの羽川翼のような
物語を少し違う角度から眺める「格」で見えましたしね。
こういう格は、メタ的な意識がないと備えさせられないのではないでしょうか。

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『禁断ワンダーラバー』の幼馴染・さくらちゃん。
主人公の恋をプッシュしますが、そのプッシュをする彼女自身に
己の言葉が当てはまるはずで…とても「面白い」立ち位置にいます。


西尾維新先生の活動は長いので、簡単に言えば
荒木先生同様に、西尾先生の影響をも色濃く受けている、という話かもしれません。
しかし、そんな話はここまで書いた上で「どっちでもいい」。
上に書いた通り、そこで影響に膝を折らない、
最終的に中山敦支色に染め抜くのが彼の強さなのです。
中山先生は漫画家だし、彼にはこのパワフルな画が、熱のあるセリフがある。
荒木だー、西尾だーと名前を出しておきながら
こんな事を言うのは妙に思えるかもしれませんが…

それらを踏まえた上で、昨今稀にみる、オリジナルの漫画を描ける才能の持ち主。

それが、中山敦支という作家の正体だと思っています。
こんな「愉しい」作家の漫画を、単行本まで待てるでしょうか。
否!(反語)
もちろん、単行本でも購入し、追いかけますが
毎週、ヤングジャンプをわくわくしながらレジに持っていく…
そんなリアルタイムの熱を味わってみるのも、良いと思います!
『ねじまきカギュー』楽しみです!!

オマケ

連載となると、様々な先読みができるのも愉しいところですね。
「南家」と言うからには「北家」、ライバルがくるのかな!と期待する
設定からの期待。
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この子猫ちゃん絶対また出してね!という
画からの期待(笑)。
また、カモネギくんの女難体質というのは
大きく眺めれば、カギューちゃんにも当てはまってしまうのではないか?
→つまり、カギューちゃんの抱くこの思慕の情も
災難と同原、体質という他律的なものからなる
ある意味「偽り」の情愛なのではないか?という
構造面からの問いかけ期待。

言葉、画、作品・作家そのものが内包する
メタ性というか、自己言及性。
様々なフックから、色々な想像を巡らせてしまう
それが「愉しさ」の正体なのでしょうね。


http://twitter.com/rui178

毎週木曜朝は、週刊少年チャンピオンについて呟いていますが
今後は『ねじまきカギュー』も一緒に呟くのです!

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