週刊少年チャンピオンの2010「脱不良」志向?

最近絶好調!の無差別級まんが雑誌、週刊少年チャンピオン。
『みつどもえ』『侵略!イカ娘』といった小品がアニメ化されつつも
同時に雑誌全体のイメージが、一気に
若く猛々しい、それでいて通りのいい風になってきているのは、
正調のスポーツ漫画が『弱虫ペダル』『バチバチ』
そして新連載組の『ハンザスカイ』と
全弾命中しているのが大きいのでしょう。命中?誰に?
読者に…いや、僕にですよおおお!!全部好きだもの!!
今回は、その中の『ハンザスカイ』のお話…を、しようと思ったのですが、
まえがきが長くなったので分割します(笑)。

その前書きとは、
最近週チャンに脱不良の流れがきていますね、という話です。
不良撲滅的なものとは違うので、ニュアンスの加減が難しいのだけれど
確実にそれは、読んでいて感じるものです。

言うまでもありませんが、昨今の秋田書店系の少年漫画で
ダントツで売れているのは、実写映画化もされた
『クローズ』『WORST』といった高橋ヒロシ作品、不良漫画。
僕も後輩に勧められて、『クローズ』は全巻読んだりしている。
ですから全否定のような事は、する気はないのだけれど。
でも「青春モノの、学校モノの、不良モノ」ですよね。
つまり、とても細分化された先の、1ジャンルでしかない。

ジャンルに限らず、面白いものは存在する。
それは真理です。
ただ、皆が皆押しかけて二匹目三匹目のどじょうを狙うほど
広い穴(ジャンル)ではないだろうと。
確かに不良漫画系は、コンビニなどでも置き易いし
実際ある程度は「ジャンル買い」もしてもらえるんですけどね。
しかし以前『ケルベロス』の記事でも触れた通り
守りに入っていい部数ではないはず。
『弱虫ペダル』というエースを持つ今こそ
チャンピオンは攻める時期のはずです。

敢えてそれを強く押し出す為に、最近
「脱不良」は一つのテーマになっていると思います。
上に書いたように、不良漫画だろうがいいものはいいし、
今でも不良漫画が皆無というわけではない。
ただ、極端に依存した時期が長すぎた為に、
ニュートラル化を目指す際
多少声高にでも、傾向を打ち出さなければならない時期なのでしょう。

もちろん、作家陣が連携して、示しあって
そういった流れを生んでいるとは思わない。
けれど、編集部の選択かもしれないし、或いはもっと漠然とした
時代の、雑誌の空気のようなものがあるのかもしれません。
「反不良」とまでは行かなくとも、最近とみに
不良のその先を描こうとしている漫画が、多いように思います。

ナンバデッドエンド 1 (少年チャンピオン・コミックス)
秋田書店
小沢 としお

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変わった不良漫画マス ...
おもしろいです。斬新 ...
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ある種、この流れのきっかけ…とは言わないまでも
それこそ、野球漫画の歴史における『タッチ』のように
週チャンにおける象徴的なものをこの作品に見ているのですが、
不良を忌避する不良一家の最強不良、という形式を取り
『MG5』の続編『デッドエンド』で更に真っ向から踏み込みつつある
松を抱きしめたい愛犬漫画『ナンバデッドエンド』。
バチバチ 1 (少年チャンピオン・コミックス)
秋田書店
佐藤 タカヒロ

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良くも悪くもベタです ...
心底震えが止まらない ...
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灼熱の相撲漫画『バチバチ』は、主人公鮫島鯉太郎の造型自体は
類型的な不良主人公と、さほど差はない。
ただ、「本物の戦い」はそこにではなく、土俵にあるという
「踏み台」的に不良を使った。
鮫島と似すぎていて、色々漫画読みとして不吉な香りもするライバル・石川も
タイプとしては完全に同じです。
ANGEL VOICE 1 (少年チャンピオン・コミックス)
秋田書店
古谷野 孝雄

ユーザレビュー:
あの作品..サッカー ...
奇跡の物語のはじまり ...
サッカー漫画の隠れた ...
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『ANGEL VOICE』も、やれサッカー版『ROOKIES』だ『スクールウォーズ』だ
(ROOKIESのパクリと吹聴する人は、大層なオリジナルだと思っているのでしょうか。
 起源問題は最終的に恥をさらす事が多い。
 それは、「起源だから偉い」という論拠だけだと、
 更に先人がいただけで瓦解するから。
 なんのことはない、どんな類型だろうが、面白ければいいのです)
…と言われるだけあって、当然「打ち込めるもの」としてサッカーを捉えています。
シュガーレス 1 (少年チャンピオン・コミックス)
秋田書店
細川 雅巳

ユーザレビュー:
これまた、新しいタイ ...
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今春の新連載構成の中にあって、唯一の「不良漫画枠」と思える
『シュガーレス』…実際不良漫画ではあるのですが…も
一見すると、これまでの不良漫画と同じようで、
根本的な「動機」の部分が全くの別物です。

不良青春漫画というのは、とにかく強い事はかっこいい、
束ねるデッカイ男はかっこいい…その憧れにストレートで訴えかけ
そこに「何故」を求める事は基本ないのですが、
『シュガーレス』の場合、主要人物達が「在り様」のようなものを求めて
結果として、「てっぺん」を目指しているという点で、似て非なる、
良くも悪くも「賢しい不良漫画臭」がします。
単純な不良信仰的な匂いを、この作品から感じる事はできない。

※最近やってる『エクレア』編が、少し不安で…
 不良路線的な意味での「テコ入れ」でない事を願っています。

そして、『ハンザスカイ』もそれらの流れに則っていて
不良最強の男、半座が空手少女藤木に一目惚れし
空手部入部、という物語になっている。
ここでも、不良と対比させながら
空手の充実感を描いているのですが、半座の場合
「仲間がいなかった」という要素でもって、
スムーズに不良と空手を峻別するよう、意識誘導しています。

本来、クローズ系は勿論『ナンバ』もそうであるように
不良には不良なりの良さもあるし、仲間も生まれるわけです。
しかし、そこを描いてしまうと、
そちら側にもそれなりに豊穣な世界があるがゆえに、
容易く抜けられなくなってしまう所がある。
ところが半座の場合、「一匹狼」と「不良」を
(おそらく意識的に)最初から重ね合わせ、
他の答えを用意しない事で、心理的に

「不良寂しいです><」

…いや簡単に言っちゃってますけど(笑)…
と、言う印象を作り出す事に成功しています。
後々、新キャラとして不良サイドから加える可能性自体はありますが
この心象を打ち出した以上、半座に勝手に仲間意識を持っていた男、
であったり、勝手に惚れていた女、であったり。
半座の意識にある「寂しい不良時代」を崩さないようには手を打つでしょう。
とにかく今、半座は空手の世界で己の実存を胸いっぱいに味わっている。

『クローズZERO』も終わりを迎えようとしているし、
今、週刊少年チャンピオンの編集方針は
成功作品たちの力を借り、
大きく舵を切ろうとしているように思います。
さんざん繰り返した通り、不良漫画自体が罪という事はないのだから
週チャンに「不良枠」自体は残っていく事でしょう。
高橋ヒロシ作品から始まった枠、というわけではなく
僕の知る限りでも、『750ライダー』であったり
『本気!』『特攻天女』…古くからの伝統的な枠ですから。
ただ、イメージの幾分かを
月刊の方の少年チャンピオンに、預けてしまう手もある。
なんにせよ、物語そのものの歴史がそうであるように
「問いかけ」はステージを進めるものです。
何も考えずにその場に留まるよりも、
今意識的に不良の「先」を見つめている週チャン。
これが、雑誌の春というものなんだなぁ。

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