『ささめきこと』4巻 青春は、14番目の月でできている

これでようやく最新刊に追いつきました。
この巻、ほとんど回想エピソードで形成されているものだから
3巻ラストの“抱きつき”を目に焼き付けて読んだ側としては
軽い肩透かし感もある一方で、落ち着いて全体を俯瞰すると
ほとんどベストに近いベター選択っぷりで回想を挟めてきている。
(個人的好みで言えば、断片に織り交ぜるくらいでもいいです)
それは、ここまでの感想で述べている通りで

A・純夏は何故、風間なんか(笑)を好きになったのか
B・風間は何故、「可愛い(女の)子」が好きなのか


この2点を敢えて語らず進めてきた以上、
一旦互いの感情が明らかになったこの時点で
曖昧な部分を整理にかかり、互いの感情の補強にかかるのは
非常にタイミングも良い、わかる選択です。

4巻は主に、序盤は風間の心の中にある「ささめき」を
後半は回想によって上記で言うところの「A」を描いている。
心情描写が主の巻なので、個人的判定だと
全体的にこれまでの巻の中でもっとも百合っぽい巻、ですかね。
互いに秘めたる感情の行き違いとか、キュンキュンきます。

さてそんな中、これまで描写されてこなかった風間汐というキャラクターに
ようやくスポットライトが当たり始めています。
純夏の感情はほとんど出尽くしたので、
ロッテちゃんの登場をターニングポイントに
次は「相手」=風間を追う、というのも本当に理屈で組んでるなぁと。

で、その風間。…色々ギリギリかな?
彼女という人格がどこまで“通る”かという際(きわ)に近づいていますが
色々と薄氷踏んでる感があります。
まぁ、でも、ギリギリ…大丈夫。かな?

まずこの巻で打ち出してきたのは、タイトルにもした
私的「青春の感情を形成する2大要素」の、その1です。
…え?それ何?書いておきましょう。
~青春の感情を形成する要素~(仮)
・14番目の月
・感情の誤配置

これです。2つ目の方は、まだシックリする言葉を見つけられていないのですが
「14番目の月」に関しては、ちょくちょく言い出すかもしれません。
これは、僕が婚前ユーミンこと(笑)
荒井由実さんを敬愛している事と関係しており、
彼女の曲名から取っています。まぁ、曲も映画が元ネタだったりしますけどね。

荒井由実 14番目の月

画像

このセリフが「14番目の月」の歌詞から取られた事は有名である
(by民明書房)
※いい偶然だけど、もちろん嘘です(笑)。

月齢14。
すなわち15夜、Full Moon。
満月の状態を「絶頂期」と捉え、そこからは欠けてしまう一方だから
満ち切らないけれど寂しくならない
月例13、14番目の月を求め続ける、その感情を
僕は「14番目の月」感情と呼んでいます。

汎用性を持たせる為に、あまりシチュエーションを特定せず
「踏み込む事を恐れる感情」それ自体をそう呼ぶ事が多いですね。
この感情と、未成熟ゆえに自分の感情に当てはめるべき言葉が見つからず
知っている限りの「別の感情」に当てはめ、自分でそうだと思い込んでしまう事。
=感情の誤配置(誤定義?)
この2つが、青春を甘酸っぱくする
そして青春を青春たらしめるスパイスだと考えているのです。
いつまでも気持ちは若く!forever young!という意味合いで
「俺は今でも青春だぜぃ!」と言い張るのは、アリだと思いますが
思春期の一時期にあるものだけを青春と特別視するのだとしたら
きっとそういった煮え切らない・定まらない感情たちが
あの時代を特別にしているのでしょう。

それを強く打ち出してきたのが、この巻の風間。
純夏は特別だけど、友達。好きだけど、友達。
友達ならその先に踏み込んで否定される事もない。
その先がない代わりに、ずっと続けていける。
だからすみちゃんは、私の色恋沙汰とは別のところにある
大事な友達…。
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14番目(溜息)。
14番目の月を「小望月」と呼んだ昔の人は
このニュアンスをも汲み取っていたのでしょうか。

で。14番目の月自体は大好きですから、それには文句ないのですが
これまでの風間と整合性を取ろうとすると、
1度ちゃんと整理しておく必要があるように思います。

まず、風間は純夏と出会う前から
可愛い女の子が好き、という点は押さえておく必要がある。
ここは少々残念な気持ちもあって、最初はただの「女の子が好き」だったのが
純夏と出会い、無意識に募る気持ちを隠そうとする心理が働き
“可愛い”女の子を愛でるようになった、となれば
最高に身もだえする展開ではあったのです。
残念なことに、そういう流れではない。

さて次は「どこからささめいていたか?」という部分ですかね。
言い換えると、風間はいつから純夏を想っていたか。
4巻の14番目の月再定義が強烈なので、この感情自体を
ずっと秘めていました、と取る事も可能なのかもしれませんし
単純に作品を語るなら、そうしてしまった方がラクな気もします。
(お互いに最初から好きなのに…と、物語をシンプルに纏められるので)
ただ、そうなると第一話で図書委員の先輩を想う風間などが…
その涙が、「え、その涙なんだったの?」という話になり(笑)
また風間の悪女視点が強まってしまうので、ここは意識的に
ささめいていた、という読みはしない方がいいように思います。
あくまで無意識なのでしょうね。「秘め」てはいない。「隠れて」いた。
それがロッテちゃんを機とした内心の吐露、互いを求める気持ち
そこから生まれた「カワイイ」に繋がり
純夏をカワイイと呼んだその時から、“かっこいいすみちゃん”も
自分にとっては可愛い女の子の範疇で、ずっとそう想っていた…
と、遡って気付いてしまった。

まあ、こんなところかなと想います。
前巻の感想で触れたとおり、付随するハートマークが軽すぎますから
「カワイイ」それ自体は何の気なしに言ったのでしょう。
けれどその言葉の意味するところは、自分にとって
恋愛無関係の存在だったはずの純夏が、普通に「対象」であること
そしてそれは今気付いた事というより、きっと
自分の内にある何かは。とうにその事に気付いていて
(それが2巻の執着などに繋がっています)、でも表に出てこなかったこと。
それを全て遡って認識してしまった、と。こういう順序なのでしょうね。
少なくともそう読めば、風間の悪女度は
極小まで減らせるように思います(笑)。

これで、かなり作品構造は整理された感がありますね…
気になるのは、女性同士である理由についてはどうするのか。
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これ、演出として凄く綺麗な、良い演出だと思います
(食事をするみんな、という俯瞰を入れる事で、その先の嗜好の差なんて
 自分たちを形成するほんの細部でしかない、という事を表現できている)
が、一方で「結構すんなり辿りついたなぁ」という気持ちも少々。

ただし、ここも極めて理屈として通った組み方はされていて
この場面で純夏が悩まないのは、

純夏の風間への想いが
風間を思えばこそ、彼女の基準「かわいい」に。

風間の純夏への想いが
かつて親友を好きになって拒絶された苦い記憶「気持ち悪い」に。

それぞれ食い止められているものであり、それでいて
相手の気にしているもの自体は当人は気にしていない、という
ズレ、すれ違いを描く演出なんですよね。
純夏は「可愛くない自分」を気にしているけれど
風間は実際純夏に「カワイイ」と言ってしまっているし、好きだと。
風間は「気持ち悪い」といわれる事を恐れて友達どまりを望むけれど
純夏はここで「なんだっていうんだ」と、壁を突破してしまっていると。
実は互いに打ち明けてしまえば、互いにそれを受け容れられる状況なのに
互いに互いのことを思えばこそ、そこに踏み込めない。
この関係を美しく対比させ、際立たせる為にこそ、純夏の方は
「女性を愛すること」に対してさして悩まないわけで
このへん、上手い!と感心することしきりです。
逆に見逃しちゃ勿体ない部分なのでチェケラッチョYO。
残りは、せいぜい
B・風間は何故、「可愛い(女の)子」が好きなのか
これくらいですよね。
ここはちょっと、描く描かない微妙なゾーンになってきています。
純夏に女の子が好きな理由を問われ、風間が答えるシーン
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…どちらとも取れますよね。
何か含むものがあるようにも受け取る事ができるし
(この場合は理由を描く)
「自分でもわからない。どうして私はそうなんだろうねえ」
(=そうなんだからしょうがない、という事で、嗜好自体を問題視しない)
という風にも受け取れる。ので、ここは今後も注目しておきたい部分です。

理由があるのだとしたら、「かわいい」とワンセットで
自分より“か弱い”存在を求め、
その相手より優位な位置で恋愛関係を築きたいという心理が…
それは自分が”か弱い”存在として嫌な目にあった過去への反発として…?
うーん?どうなるでしょうか。
「気持ち悪い」一つでそれなりに重たい過去なので
この上で虐待などを重ねだすと、ちょっと収拾がつかなくなる気もしますね。
好きなものは好きだから、で押し切るかな…。
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にしても、秀逸な表紙ですよね。
後ろを歩く、風間の表情=内心に物語がシフトしたことを
そこを見切れさせていることで
極めて美しく宣言している。

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