ジャンプスクエア2011年2月号・EXPLOSIVE読切『フラグマン!』

以前記事にした『曇天・プリズム・ソーラーカー』、
To LOVEる ダークネス』など
楽しみにしている作品も多い、月刊ジャンプスクエア
今回は、twitterで知り合った(というか、僕があちらを認識した)
漫画家さんの商業誌デビュー作が掲載されました。
漫画のタイトルは『フラグマン!』。
原作:maa坊 漫画:丈山雄為というタッグ形式のうち、作画担当の方と
twitterお友達なのであります。
普段はさん付けしているとはいえ、線引きはハッキリせねばなりますまい。
おめでとう、ぽろすけ「さん」!
頑張ってください、丈山雄為「先生」!

下手に会話を交わしたりしているだけに、どういうスタンスで接すればいいか
この話を聞いて以来、軽く悩んではいたのですが(笑)
文字数に熱意や意識の割きっぷりを保証してもらう形で
あまり気にせず、自由に書いていこうと思います。
現在読み立てほやほやですしね。

『フラグマン!』。
最初にこのタイトルを聞いた時は、「ああ、今のジャンプ風だ」と思いました。
メタの大家とも言える西尾維新原作『めだかボックス』を象徴として
ジャンプ内でジャンプを描く『バクマン!』。
ナチュラルに上位視点ギャグをかます『保健室の死神』などなど、
今のジャンプには、構造そのものを更に上から眺め言及する、という事に対し
随分と門戸が開かれている印象がある。

この流れ、過ぎると自家発電が出来なくなるというか、
既存の作品の縮小再生産に留まってしまう可能性もあれば
同時に、資産を活かし「次」に進める可能性とがあり
一概に肯定したり否定するようなものでもないと思っていますが
とりあえず『フラグ』ですからねえ。
まあ、問答無用でそういった方向性の作品だろうと思っていました。

が、読んでみたら、そうでもなかった。

作品タイトルに『フラグ』とあるものの、物語全般における
普及した意味での「フラグ」は、冒頭の映画シーンのみ。
このシーンでは、映画の中の人物が典型的な
「生きて帰ったら云々」といった発言をします。
まさに、これこそが死亡フラグ。
つまり長い物語の歴史の中で、
大量に同系統のパターンが積み上げられた結果生まれた
経験則としての「次はこうなる」を醸成したものが、僕らの使う「フラグ」。

ところが、主人公の旗くんは
同じ画面を見ながら、経験から来るものではなく
単純な事実、見えるものとしての「フラグ」を読み取っている。
冒頭にこのシークエンスを配置する事で、作品説明になっているのですが
この時点で、タイトルは『フラグ』ながら
僕らの普段接しているフラグとは、言葉だけ借りた別物、
一種の予知能力じみた作品ルールとして「フラグ」という言葉が使われており
本作のタイトルから想像していた「フラグ言及漫画」
的なニュアンスはほぼ皆無なのでした。

単純にフラグに自己言及的という意味なら、
『神のみぞ知るセカイ』あたりの方が余程メタメタしい漫画です。
時代性とリンクを張る程度の意味合いと考えてもいいでしょう。
少なくとも僕らは、歩いていたら犬に「死亡する記号」が浮かんでいて
ああ死ぬんだ、と判断する事は「死亡フラグ」とは呼びません。
犬が幼い飼い主を探しに走り去ったりしたら、若干匂いはじめますが(笑)
要は言動とのリンクが貼られないものは、物語的な意味でフラグではなく
やはりそれは、死亡予知的なものなのですよね。

では、この作品の「フラグ」は実際のフラグとは遠くかけ離れ、無関係なのか。
上記の通り、用法は確実に違います。
但し、作品の主張としては結局「フラグ」に向きあったテーマを纏っている。

旗くんは、直近の予知じみた能力である「フラグ」可視能力によって
その場その場の展開の良し悪しは、読み取る事ができる。
けれど作品が彼を祝福したのは、
フラグを読み取った先に辿りついた
万難排した未来、という形ではなく
フラグがどうであろうと、自分の心の向きに従った行為にこそ
結果が伴う、という形なのでした。

子供の頃、いじめられていた女の子に構う事で
自らも不幸になるという「フラグ」を見ながらも
その子を放っておけなかった旗くん。
結果彼はイジメを受け、大変な目にもあいますが
しかしめぐりめぐって、直近のフラグでは判断できないような、
作中の言葉によれば「大逆転フラグ」でその行為は肯定される。
いじめられていた女の子は、可愛い子になって帰ってきて
旗くんの心の方向を承認してくれるのですから、
この世の中に、これ以上のご褒美もそうないでしょう。

目の前にある未来、フラグとしては選ぶはずもないような行動も
自分が正しいと思い、貫く事で
大きなリターンとなって返ってくる、
だから勇気をだそう、という作品テーマは
少年誌らしく、とても陽性ですが
フラグというものの本質が「運命」にある事を思えば
要は、運命は自分の手で切り拓け、或いは
運命が何を言おうとやらなきゃいけない時がある、という
叱咤のテーマを纏っている事になります。

本作は、先ほど書いた通り
この上なくわかりやすく、美少女が自分の行為を観ていてくれ
自分以上に自分の事を信じていてくれた。
そうやって、フラグ(予知)的には損と思われる行為も
正しいならばめぐりめぐって報われるよ、
という称揚を行っているのですが
これ、もっと世界の厳しさを適用した場合
何になるかというと、つまりは
ジャンプ史上に残る傑作漫画『ジョジョの奇妙な冒険』第5部のテーマ
「眠れる奴隷」と直結します。

ジョジョの世界観は、理不尽な程のあっけない死を描いたりして
「何も手に入らない」様を描きながらも、しかし
ラストエピソード、運命を予言するスタンド
「ローリング・ストーンズ」のエピソードで

彼らの苦難が・・・・・・
どこかの誰かに希望として伝わって行くような
何か大いなる意味のある始まりなのかもしれない・・・・・・


というスタンスを取る。
本人には見返りはなくとも、その連なりが
いつしか誰かに何かの形となって報われるかもしれない、
その連なりの一部となった事が既に勝利なのだ、と。
ジョジョの場合、楽観思想は個人の単位には適用されず
「人間」という単位で適用されている事になる。
まさに人間賛歌を謳う漫画らしい選択なのですが

要は、そのジョジョの主張をもっと「優しく」。
個人の物語の範囲で、報われるよ!と宣言した
一種の御伽話が『フラグマン!』という事になります。
これは別に、茶化しているわけでも批判でもなく
実際に報われるケースだって世界には転がっているわけで
(必ずとは、様々な生のシチュエーションに対し
 失礼に思えるので、言えません。
 その悩みから生まれたのが、前述の「眠れる奴隷」でもあるでしょう)
敢えてそれを宣言するのは、
「少年漫画」「エンターテイメント」として、悪い選択とは思えない。

『フラグマン』という名を持ちながらも、
どちらかといえばその場での効率や結果を観て動くのではなく
まず小さなフラグへの疑念を描き、
同時にその反逆がより大きな「フラグ」に繋がる、とも描いてみせる。
目に見えた形での結果に踊らされるよりも、
正しいと思う事を為せ。それは、人間の意志への賛歌以外の何者でもない。
ジョジョを引き合いにした通り、その先の「ご褒美バランス」は
個々の作品の選択する領域ですから、さして重要ではなく
タイトルで醒めた自己言及を想像させた割には
予想外に熱い、まっすぐな漫画だなぁ…というのが
正直な感想なのでした。

勿論、全てが素晴らしいとは思わない。
長々と書いてきた通り、寧ろフラグに背いて大きなフラグを成す、
意志の賛歌なのだから
ブサイクな親父を出して「こんな俺でもフラグのお陰で結婚できたよ!」なんてのは
フラグマン説明の為とはいえ、茶化しが過ぎて
作品の温度を勘違いさせかねない、
深夜の通販番組のような安い仕掛けではある。

全体的に、溜めを入れる所がなかったので
最初から最後までマイルールで突っ走ってしまい、
一つ間違えると
「レベルのたけぇ(悪い意味で)」漫画にもなりかねない所もある。
個人的には、自宅で旗くんの思考や方針を纏めるフェーズが欲しいし
ブサイク親父なんかを出すよりは、そこで
先人として同じ技能をもった兄ちゃんや姉ちゃんを出し
(勿論親でもいいが、ブサイク云々は要らないかな)
その時の旗くんにはわからないような、格の高い助言を吐くと。

※「フラグを折る事で生まれるフラグもあるのよ」とかね。

そういう形で、作品における真のフラグの意味に誘導して欲しかったりもする。

けれど、基本的に、想いがちゃんと入った漫画でした。
僕らが普段やっている、週刊少年漫画4誌を語る
「今週の一番」で、何の予備知識もなく本作を語ったとしても
「ちゃんと主張が見える」くらいの事は言ったでしょうね。
無味乾燥な、形だけ妙に整って連載構造準備オーケーです、
みたいな作品、最近増えてきていると思いますし
掛け値なしに、好感の持てる作品なのでした。
絵は、ハッキリとした見やすい線はもとより
笑顔がとても陽性のエネルギーを纏っていて、これは才能ですしね。

作者の「ぽろすけさん」の単位には、
ヒロインの京子ちゃん可愛いよ京子ちゃん、と言いますし
丈山先生、maa坊先生の単位ならば
上に書いたように、称えながら更なる上を求めます。
共通するのは応援と祝福。
なんにせよ、漫画家さんが卵から孵る瞬間を
特別な思い入れを持って眺める事ができ、とても愉しかったです。
ジャンプスクエアは良い雑誌だなあ。

ジャンプ SQ. (スクエア) 2011年 02月号 [雑誌]
集英社
2011-01-06

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ジャンプ SQ. (スクエア) 2011年 02月号 [雑誌] の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


http://twitter.com/rui178 呟いております…が
それはそれとして、porosuke先生の呟きが読めるのは
twitterだけ!

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック