俺のTo LOVEるがこんなに面白いわけがない ジャンプスクエア『To LOVEる ダークネス』

先月始まった『曇天・プリズム・ソーラーカー』をはじめ
何気に好きな雑誌である、SQこと月刊ジャンプスクエア。
この雑誌、『迷い猫オーバーラン!』開始以来、雑誌の顔として
矢吹健太朗先生の絵を「顔」として活用している様子で
季刊として生まれた派生雑誌『ジャンプSQ.19』に迷い猫が移籍しても
今月からは『To LOVEる ダークネス』が連載開始。
すっかりヤブケン頼みのジャンプスクエアで、まあ僕も
眼福としての価値を認めないではありませんでしたが、しかし
始まった『To LOVEる ダークネス』が、意外な面白さを持っていたのでした。

To LOVEる―とらぶる― ダークネス 1 (ジャンプコミックス)
集英社
2011-03-04
矢吹 健太朗

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『To LOVEる -とらぶる-』は、いわずと知れた週刊少年ジャンプラブコメ枠で
意欲的にエロアングル・エロシチュエーションに挑戦し続けた全18巻の作品。
この秋『もっとTo LOVEる -とらぶる-』というタイトルで、
今度は原作準拠モノとして再びテレビアニメ化されています。
(前回のテレビアニメは、
脚本構成に浦沢義雄さんを起用した時点で目的が違うため、
同ベクトルでの評価は殆ど意味を成しません。)
基本構造は、

主人公結城梨斗(リト)の所に
宇宙人、ララ・サタリン・デビルーク(ララ)が降ってきて、求愛をしてくる。
ララに惹かれるリトだが、一方ではそれ以前から
同級生の西連寺春菜(春菜ちゃん)が好きで…


と、シンプルな三角構造。
ララの妹たちや他の宇宙人、宇宙生物、
あるいは学校の生徒達や実妹などなど
可愛い女の子たちは沢山存在し、その大部分が
リトに好意らしきものを抱いている為
パッと見は一対多数のハーレム構造で、
それは最終巻の単行本表紙を観てもわかる通り。

To LOVEる-とらぶる 18 (ジャンプコミックス)
集英社
2010-04-02
矢吹 健太朗

ユーザレビュー:
闘争の記録様々な規制 ...
見事なまでの初志貫徹 ...
え?終わり?タイトル ...
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ただ、最小単位は明らかにどちらを選ぶ?の三角なのでした。
ララと春菜ちゃんが若干共闘関係、互いの想いを知った上で
かつ相手に負の感情を抱いていないので、ドロドロしたものはなく
更にはララが地球の倫理観に縛られていない為、重婚余裕で許容、と
その点で、リトにさしせまった選択の必要性は存在しなかったけれど
単純に、彼自身が納得する為の物語として
誰を選ぶか?というものは存在していた。

当時、最終回前の話を記事にしましたが
結局物語は急速に春菜ちゃんの方に舵を切り、更に言えば
最終回ではそれをもう一度、半ば強引に均衡へと引き返し。
当初は諸々の違和感を覚えさせたこの流れも、
その後、再び記事にした
迷い猫オーバーラン』の連載第一回&矢吹健太朗インタビュー
更に加えるなら、『To LOVEる -とらぶる-』の最終18巻での矢吹長谷見対談により
このあたりは、矢吹健太朗先生の
誰も傷つかないハーレム志向が生み出した、という事が
殆ど明らかになっております(笑)。
春菜ちゃんに一度傾いたのは、リトの初心も表現しておきたかったからで
それにより、リト自身にはぶれない「想い」があるが
押しの弱さと状況により、とりあえずのハーレムが続く
…という形を取った作品なのでした。

リトを単なる浮気者にはしたくなかったのでしょう。
連載終了時、実はリトはもう、面と向かって春菜ちゃんに告白をする気
…というか、した状態で
単にそれを春菜ちゃんが聞いていない&他のヒロイン達が
自分に言われた、と誤解する環境だったというだけ。
つまり、シチュエーションがもう一度伴えば
フッツーに、リトは春菜ちゃんに告白をできる状態なわけで、
同時に物語は(連載が終わっても)延々とそれを阻止し続けるのでしょう(笑)。
かなりきわどい形で、見えざる力によって維持されているハーレム。
それが、とらぶる型ハーレムなのでした。
実質はまるでハーレムじゃないんですよね。
リトの本当の想いはぶれないし。

ところが!

単なるスピンオフとして始まった
『To LOVEる -とらぶる- ダークネス』(以降とらぶるダークネス)が、
このあたりに思わぬ視点を持ち込んできました。
それは、ララの双子の妹のうち
植物と仲良しの内気…と見せつつ計算高く腹黒な、
モモの逆転の発想。

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「楽園」を作ってリトさんを「肉食系」に変える!

楽園=ハーレムを、妥協点ではなくゴールに見立ててみせた。
『とらぶる』もそうだったでしょうか?
しかし、矢吹先生の発想自体が
「誰かを選ぶ事で誰かのファンが傷つく」
であるように、基本的には「選択」というゴールに対しての
引き返しとしてのハーレム状態が宣言されていた。
ところが今回は、同じ「ハーレム目標」でも
作中内で、最もそれを望む人物=モモに宣言させる事で
別のものが見えるようになっています。

『とらぶる』が完全並列構造ではないというのは、ご存知の通り。
各ヒロインごとにエピソードを組める体力があるので、それに近くはあるものの
最終的には、どこをどう考えてもリト・ララ・春菜ちゃんの三人が最小単位です。
つまり、モモをはじめとした残りのヒロイン達は
「2位グループ」とでも言うべき、下位集団に位置していることになる。
基本的に、彼女たちは「1位争い」には加わる事ができません。

ところが、そんなモモの位置から観た場合
状況が強引にその場にとどめている
「とらぶる型ハーレム」(停滞型ハーレム)を
リトが己の意思で女をはべらせる
「真のハーレム」(完結型ハーレム)にしてしまう事によって
ある種の解決となる、という視点が提示されました。
作品構造的に、ララと春菜ちゃん以外は極論「にぎやかし」に過ぎない
下位グループにとっては、寧ろハーレムは
目指すべき、最大のゴールになる。

自分が1位になる未来が作品構造的に「無い」のだから
作品構造内で実現可能な最高の未来を探すと、それは
「真のハーレム」というわけです。
既存の「とらぶる型ハーレム」だと、その維持は
作中人物から観れば、とても不安定な「偶然」に頼るしかないものですが
それがリトの積極的意思の絡む形にシフトできれば、
不安のない、半永続的なハーレムが期待できる。
それは並列な、全員が1位の世界。

ハーレムを引き返しとして描いてきた本作で、
視点位置を変える事によりハーレムをゴールに見せる。
それは、とても面白い視点だと思うのですよね。
モモは、別にこの作品の構造を上から眺め
上位視点でもってそんな選択をしたわけではないでしょうが
読者である僕らから観れば、彼女の行動は
この作品の、ハーレムを作ろう、維持しようという
「大いなる力」の積極急進派として機能しているように思えますし
一方で、それは春菜ちゃんに告白しよう、と決意する
リトの物語主人公が持つ常識的なエネルギー
「ハーレム終焉願望」と真っ向から戦うものでもある。
物語力学の綱引きがここに見えるわけで、とても興味深いです。

物語は、どうもモモとヤミを中心に描かれるものらしく
かつ、ヤミの物語に踏み込むほどに、この辺ぼけてしまう心配もありますが、
しかし「ハーレムこそが自分たちにとって最高のゴール」
である位置のキャラクター達が、その地位を確立すべく動くというのは
ついつい主人公や、上位ヒロインに視点を集中してしまいがちな中
ちょっとした新鮮味、発見を与えてくれるものなのでした。

うーん、モモの視点で見ると、ハーレム悪いもんじゃないな!
僕はついつい矢吹先生を責めがちになるのだけれど
モモからすれば、努力目標だ!
思わずそんなモモを応援せずにはいられない
真ハーレム形成物語『とらぶるダークネス』、
正直『とらぶる』よりずっと面白い気もします(笑)。
少なくとも、ダークネス開始の報を聞いた時は
こんな面白さを持つようになるとは思わなかった。


また、掲載誌が週刊少年ジャンプではなくなった事で
乳首は単行本で加筆するまでもなく堂々と描くわ、
もっとアレな部分の隠し方が「湯気」「光」などよりも
露骨に、逆に隠した方がエロくなっている!という
相変わらずの長谷見・矢吹コンビの「挑戦」も見物です。
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尻尾の微妙な隠しによって逆にエロさが増している件。

エロなんて下半身に素直に従えば簡単という声もあるでしょうか。
いえいえ、そんな単純な話ではありません。
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このシーンの
「飛んできたらパンティを咥えて下ろしていた」
なんて、ほとんど
「ありのまま 今起こった事を話すぜ!」状態。
常人のラブコメ脳では
「気づいたら相手の股間に頭を突っ込んでいた」
までしか想像できないところ、こんなヒトネタを加えてくるあたり
流石毒にも薬にもならないライトエロシチュエーションを
延々18巻分も、マンネリ化しないよう消費してきたコンビ。

※褒めてます

プロフェッショナルなエロ探求精神と
多少メタ的な側面を持つ「下位ヒロインにとってのハーレムというゴール」。
2つの魅力を持つ『とらぶるダークネス』、
意外や楽しみな連載です!
ジャンプスクエアを読む楽しみが、また一つ増えました!

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矢吹健太朗
『雑誌で乳首を描いていいなら、一度はやりたいと思っていた(キリッ)』
↑…こんな声が聞こえてくるようではありませんか。
週刊少年ジャンプでやりつくした彼らに、新たな創造の翼を与える
それがジャンプスクエアなのでしょう。

ダメな翼与えちゃったなぁ。


ジャンプ SQ. (スクエア) 2010年 11月号 [雑誌]
集英社
2010-10-04

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この記事へのコメント

とん
2010年10月10日 00:47
ナナではなくモモだったような気がします。
間違ってたらすいません
ルイ
2010年10月10日 01:16
ハハッ、そんなあ。まさかあ。

…全部訂正しましたーッ!ありがとうございます!orz

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