【そんなアプローチで】ニコニコ動画、エルシャダイによる王道復古【大丈夫か?】

twitterを始めてみると、マイ・ウェイを歩みまくる僕にも
流行り廃りもガンガン伝わってくるもので、
『ニコニコ動画』をゲーム『エルシャダイ』が席巻していると言う話題は
かなり早期に知る事ができました。
個人的にも『ぷよm@s』以来、
久々に「元動画をきっかけに、様々な動画を漁る」体験をしている。
実際この「エルシャダイ・ブーム」、色々なものを示唆していて
個人的には自分がニコニコのトレンド最前線に染まっていた頃、
ニコニコ時代区分で言う所の『β時代』を思い出しています。


【PS3/Xbox360】 El Shaddai -エルシャダイ- E3 2010 ルシフェルver

これがいわゆる元動画。
2種類作られたトレーラーのうち『裏』バージョン、ルシフェルバージョンです。
裏と言うからには、勿論表があって


【PS3/Xbox360】 El Shaddai -エルシャダイ- E3 2010トレーラー

こちらが『表』だというのに
そんな圧倒的再生数の違いで大丈夫か?

再生数の差は何よりも雄弁、と言った所でしょうか。
トレーラーの仕掛け自体は
『表』を観ると「英雄が神話的世界の中で戦う」という
ゲームでは『ゴッド・オブ・ウォー』に代表される
至ってありふれた世界観のゲーム…と思わせておきつつ
『裏』を観るとそれを上位視点で操る存在がいる、という
メタ性を強調した作りになっています。
おそらくはこのあたりの現代的な視点を使い、
ユーザーにフックをかけようとした。

の、ですが。
事実は小説より奇なり。
結果的には狙った形とは異なる形で、
しかし狙った形よりも遥かに大きな形での反響があった。

再生数の差を観ればわかる通り、ネタ的な側面が強調され
現状では『表』は動画製作者にとっての
隠れ素材的な側面しか持っていなかったりします。
まあ、ある面では狙い通りと言えるかもしれない。
つまり、メタ視点が持つ諧謔性がとことんまで抽出されているわけです。
今のところ『エルシャダイ』は
英雄を茶化す、その側面に特化し持て囃されていて
様々なネタ動画が林立し、ニコニコ動画再生ランクを席巻しています。
ムービーパートとゲームパートのありすぎる映像的落差、
ムービーパートのツッコミ待ちな表情、それでいていい声、SE…
様々なケミストリーがそこにある、当然とも言えるブームです。

『そんな○○で大丈夫か?」
『大丈夫だ、問題ない』『一番いい○○を頼む』
『神は言っている、○○と』
『あいつは話を聞かないからな』『まあ、いい奴だったよ』
『〇〇をトルノデス』

様々な短いセンテンスの名言が生まれ、
ただでさえニコニコ動画のいち要素である
大百科、そこに繋がるタグというものへの相性がいいというのはある。
その意味では『長台詞がない』のも一つの長所かもしれませんが
この空前の?『エルシャダイブーム』には、
一つの大きな特徴があると思います。
それは、とにかく素材が少ないという事。

エルシャダイの公式素材は、2つのトレーラーを含めても10分に満たない。
多くの人が「これがエルシャダイ」と思っている
ルシフェルバージョンだけで考えれば、5分で満たないわけです。
勿論、その短さ、少ない素材でもって
人々を掴まなければ絵に描いたモチ、話にならないとはいえ
もしその少ない素材で人々の心を掴んだ場合、メリットとしては

動画製作者もユーザーも、
(更に言えばタグ職人まで)情報レベルがあっという間に均一化する

という点が挙げられると思います。
何せ、ルシフェルバージョンだけなら5分ですからね。

例えばニコニコの英雄、『アイドルマスター』というのは
元々多い素材に加え、様々な属性付加によって
一つの樹海、いや体系だてられた国を眺めるような深みがある。
『ボーカロイド』も、そもそも素材を生み出すツールなのだから当然とはいえ
ボーカロイドのキャラ付けなど、その深みは増すばかり。
ただ、それはユーザーの知的好奇心を満たす一方で
作る側にも、観る側にも『覚悟』を要求するものでもある。
ある程度知らなければ入り込めない世界、
ある程度知らなければ作ってもツッコまれる世界。
だからこそ、以前書いた『ぷよm@s』がそうであるように
初心者でも観られるような、脚本的な技量やコメント補助などが必要になる。

それはそれで、良さは当然あるわけです。
「知っていく実感」は最も分かりやすい満足であり、
コアファンへの道ですからね。
それぞれのファンが知識集積を持ち込む事による
「広さ」の維持がある為、大きな問題にはなりませんが
しかし「広く、そして深く」。深さに繋がっていくのがこれらの特徴ではある。

ところが、『エルシャダイ』には敷居がまるでない。
動画製作者と動画鑑賞者、更にはそのどちらの古参新参も。
知識面においては、10分で揃うこの世界には
「深み」も「敷居」も、全くない。
更には圧倒的な定型文パワーも加わって
コメントを書き込む側も
「○○だが大丈夫か?」
(本来は○○で大丈夫か?ながら
ネットスラングと結びついた格好でしょうね)
「大丈夫だ、問題ない」
「トルノデス」などと言っていればよく、そこには
書き込みでその人の熟練度を判断するような要素がない。

このままエルシャダイ熱がある程度続けば、
自然と主人公イーノックやルシフェル達に
「ニコニコ動画的キャラクター付け」が生まれるかもしれません。
ニコニコ動画内文化の歴史というのは、そういった
「俺たちによる準公式設定」(更にはそれが公式にまで影響を与える)
の歴史なわけですからね。
ただ、それも大した深みにはならないと予想します。
少なくとも、トレーラーが増えるまでは
どこまでいっても、元素材5分10分というのでは
掘り下げる深みにも限界がある。
今のところ、せいぜいがイーノックとルシフェルの間にある
ちょっとした同性愛のかほりを強調するくらいですが

そんな恋愛サーキュレーションで大丈夫か?【エルシャダイ】
これがホモ史観の震源地かな?
でも正直、元動画を観ていてもその匂い自体は普通にある(笑)

※ルシフェルなんて「堕天使」の象徴なわけだし
 この作品の最後が「俺を倒してくれよ、親友」
 である可能性もありますからね。あれ?
 ウィザードリィのトレボーワードナ共謀説っぽい?

圧倒的に敷居が低く、圧倒的に素材がない。
この事による、未曾有の浅く広い入りやすさは
それぞれの動画が良い意味で「深まらない」
ニコニコ動画最初期からβ時代を思い出すものでもあります。
ガラパゴス的な発展進化を続けるニコニコ動画にあって、
敢えて脊髄反射的な反応ができる祭りに戻る。
この事にノスタルジーを含めた面白みを感じているからこそ
僕自身、久々に同一タグ動画を数十も観ているのでしょう。
ニコニコ動画の「深み」に身を引いた人も取り込める磁場が
この『エルシャダイ』にはあるわけです。

また、動画製作者にとってもその敷居の低さは魅力で
音声抽出と、その並び替えだけでもって
ブームの最前線に加わる事ができる魅力がある。
勿論その中でも「プロの犯行」と言える動画は数多く存在するわけですが
『はじめてのチュウなんだが大丈夫か?【エルシャダイ】』

あたりには、さほど特別な技術は要求されていないし
発想のセンス、言葉遊びのセンスだけで成立している。
そんな中、数日遅れ組はクオリティで勝負をかけてきたり

大丈夫だ、問題なEvans
まさにニコマス的発想の転用と言えるかもしれませんが
他の、自フィールドへの取り込みを行ったりと

イーノックのドリームクラブ初体験

ここ1週ほど眺めているだけでも、ニコニコ動画制作の
歴史の流れを観ているような面白みもあります。
個人的にはその中に見え隠れする、
少ない素材を活かした「言葉の並び替え」の面白さにこそ
日本人古来のセンス・オブ・ワンダーを感じ、ときめいていたりします。

唯一気になるのは、消費が圧倒的に早く
素材の少なさ、深みの無さは飽きの早さとも不可分であるのに
『エルシャダイ』の発売自体が来年春と、
その遅さで大丈夫か?レベルであるという事。
発売された時「今更かよ」と言われては困るわけで
せめてニコニコ市場に貼り付けるべく、Amazonに登録され
明確な発売日が3ヶ月以内にあるようなタイミングなら、
と思わずにはいられません。

勿論、そもそもが「あまり話題にならなそうなオリジナルゲーム」だったわけで
どんな形でも話題は話題、
話題を得てからの悩みなんて贅沢だ、
というのもその通り。
この熱をどう宣伝に活かすかというのも、作り手の課題と言えるでしょう。

まあ、普通は素材の少なさ、深みの無さから来る飽きの対応するからこそ
新規データや情報を小出しする事で、話題性を保つわけですが
『エルシャダイ』の場合、素材が少なすぎるからこその逆転の発想、
その中でどう遊ぶか?という
パズル的快感もそこにあるわけで、
新規トレーラー等がブームに好影響を与えるかはわからない(笑)。
ただ、これまでのように5分レベルのトレーラーを
一ヶ月おき程度に小出しするのであれば、
情報レベルもさほど深まる事もなく
後発のご新規さんも、今のところ10分で済む情報の入手が
15分に、20分になる程度の話であるので
今のところは、それが正解かと思います。
あ、映像(音声)以外の情報は
ニコニコ的には殆ど無に近いので、
ただの公式サイト充実~なんてのはほぼ無意味なのであしからず(笑)。
しかしおしゃれで重たい公式だなぁ。

このブームをどう使うかは、作り手のお手並み拝見といった所としても
今の所は、ニコニコのゼロリターン、
しかもボカロやニコマスの手法を活かした
一周してのゼロリターン(正確には、螺旋状の階段を登り
以前いた位置の真上にいる感覚でしょうか?)を手軽に楽しめる
ニコニコにどっぷり浸かった人にも、そうでない人にも魅力的な
大変素晴らしい「遊び場」であるというのが単純な事実だと思います。
浅いから楽しい、海水浴場のようなエルシャダイ世界を
みんなでミルノデス!

おまけ・僕の好きなエルシャダイ動画


そんなファーファで大丈夫か?【エルシャダイ】
完全に発想の勝利(敗北?)系の閃き錬金術。
元々こういう発想自体が好きなんですよね、
『true tears』と『300』の組み合わせであったり。



エルシャダイのPVをエキプロで再現してみたが大丈夫か?
一番好き。声出して笑ってしまう。
元々、ムービーパートとゲームパートの顔が違いすぎるから
まあこれもアリじゃないかな、と思えてしまう
歪んだ時空っぷりがたまらなく好きですね。


そんな禁書目録で大丈夫か?【エルシャダイ】
上条さんの処理に甘さを感じ無いでもありませんが
「インなんとかさん」というネタと
「72通りあるうちの一つ、イーノックさん」というネタの連結具合は美しいし
禁書の中でともすれば軽視されがちな
インデックスとのボーイ・ミーツ・ガール部分をネタにしている事が好み。


そんなムーンライト伝説で大丈夫か? 【エルシャダイ】
言葉遊びのセンスが極まったものの一つ。
音MAD系ではSEの多用は既にパターン化してきていますから
そこにとどまらない言語センスがスパイスとして大事です。






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この記事へのコメント

たかひろ
2010年09月29日 21:35
量の少ない素材が流行るのはニコニコMAD界ではよくあることですが、エルシャダイのブームは規格外ですね。その意味では「開花」という言葉が似合うかも。
たかひろ
2010年10月02日 13:08
なんか空気を読めてなかったっぽい。
ルイ
2010年10月05日 08:16
大丈夫だ、問題ない

ってか、twitterなどのメールに埋もれてコメント気付きませんでした!失礼しました!確かに、「素材が少ないからめちゃくちゃ流行る」という法則性はないですよね。様々な要素の組み合わせの中にそれがあった、という事ではあるのでしょう。ニコニコ動画の在り方を再定義するものでもあり、一周まわっての発露は開花と読んでもよく、なおかつ「ニコニコはまだまだこれくらいくだらないんだぞ」といいますか…いや、ずっといる人にはあまり違いは感じ無いのでしょうけどね。「ニコニコは変わった」と感じて疎遠になっていた人には、エルシャダイはちょっと違う意味を持っていたと思います。僕もその一人で、とても良い出来事でした。
たかひろ
2010年10月05日 14:47
なあんだ。
ニコニコが変わったというのは同感で、こうしてくだらなさが爆発するのは僕も好ましいと感じます。
ルイ
2010年10月10日 01:11
小規模には、いつもそこらで起こっている事なのでしょうけどね。観測にコストをかけていない人には追い切れない事象で、それが明確にわかる形で出てきた事に価値があったと思います。

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