週刊少年チャンピオン 新連載『ケルベロス』が素晴らしいから、今度こそ攻めろチャンピオン!

今週号から、新春新連載攻勢のはじまった
週刊少年チャンピオン。
第一弾として登場したのは、フクイタクミ先生の『ケルベロス』です。
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少年チャンピオンといえば、いわずとしれた?
かつて栄華を誇りつつも、今では
四大少年誌の中で最も小規模な、
表紙がバキばっかりな雑誌。
(あと、山本梓とか)

我が修行場「漫研」さんでの
辛く愉しい毎週の少年雑誌チェック遊戯
今週の一番」では、伝統的に
「お前ら少年チャンピオンに甘いんじゃね?」と言われたりしています。
でも、本人たちにそんな意識はなくて
試しに600回から620回までで、チャンピオン作品が取った回数を見ても
…7回…多いな?(笑)

コホン。

えー、チャンピオンに甘いのですが←おい!

甘いというか、「勿体無い雑誌」なので、
それが色々な面で影響している気もします。
物凄く面白い連載も載っているのに、それが全体イメージに波及しない。
今でさえ守りに入るような部数じゃないくせに、
バキやドカベンを表紙にした、保守の香りを雑誌側が出してくるから
全体の印象がナカナカ刷新されません。
一部はとても面白いけれど、一部は本当どうしようもなくて…
その辺の「どうしようもない」ものとの
相対評価が無意識の内に行われ
チャンピオントップ勢に甘いのかな、という気もしないでもない。

けれど、チャンピオンの面白い作品は、本当に面白い。
少なくとも、今少年誌で最も熱い連載『弱虫ペダル』があって
弱虫ペダル 1 (少年チャンピオン・コミックス)
秋田書店
渡辺 航

ユーザレビュー:
少年漫画として、自転 ...
マガジンのほうよりマ ...
「バカにするな、バカ ...
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※ワンピース?あんな化け物、例外ですよ、例外(笑)。

今少年誌でもっともいかがわしい、ハッタリの効いた漫画
『ギャンブルフィッシュ』もある。
GAMBLE FISH 1 (少年チャンピオン・コミックス)
秋田書店
青山 広美

ユーザレビュー:
素晴らしい作品ギャン ...
顔見せ週刊少年チャン ...
もろに追従ライアーや ...
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そこに最近では、スポーツもので『弱虫ペダル』だけではない!と
これまた灼熱の、相撲再評価マンガ『バチバチ』が登場。
バチバチ 1 (少年チャンピオン・コミックス)
秋田書店
佐藤 タカヒロ

ユーザレビュー:
熱さMAX!!!!! ...
何度も読みたくなる相 ...
面白いけれど少し、展 ...
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(エンジェルボイスなんかも面白いんだけどね。ルーキーズ的で)

他にも短編でキラリと光る『幻仔譚じゃのめ』
原典を見事に新訳する事に成功している
『聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話』
(車田先生の聖矢がたまに始まると、
 どっちが本物かわからなくなるw←)
萌え系の小品では『みつどもえ』
などなど。数は揃ってきていて
あと数発!という感じもあるのですよ。
思わず応援しちゃいますよね。
今がまさに、勝負時なんです。

→ところが、こういう時に限って
秋の新連載がしょうもなかった。

秋新連載がしょうもなかった!!(二度目)

もう、秋の新連載に関してはね…
漫研でも、さんざん
「週チャンの新連載や打ち切りはダーツで決められる」
などと揶揄してはきたんですが、もう、ほとんど正解だろと。
『出陣!!武将頭高校排球軍』はね、
軽く週刊少年マガジンの『ぼくらの戦国白球伝』あたりを思い出しつつも
ギャグに振り切れないのが逆に良くて、
スポ根ものとしていい構造を持っている作品を
突っ込んだら負け状態の変態たちで行う、という所に
味わいがあって、面白かったのだけれど。
『ガリガリ』と『ネコチワワ』を同じ時期に連発するって
もうね、バカかと。アホかと。
両方ゆる不良系なんだからせめて競わせて1つ選べと。
そもそも競ったらどっちも淘汰されて然るべき出来だろと。

そんなしょっぱい新連載攻勢の中、定期的に出てくる短期集中連載は
(というか、そもそも連載と集中連載の線引きが曖昧)
『ヘレンesp』とか『任侠姫レイラ』とか、味わいがあって
読みきりでも『アフロボマー』とか、シュールさが気になったし
つうか、それを言い出すなら
『トリガートリガーハッピー』の人どこいったの?orz
※コマ割とかも刺激的で(若干アメコミ調?)
 かなり面白かったのに…タランティーノ的で
…などなど、才能がいないわけじゃないのに、何故か
誰がどう見ても、才能順にチャンスが与えられている気がしない
そんな謎の愛すべき?雑誌、少年チャンピオンは
とてもレベルの高い、M的快感を与えてくれる雑誌なのでした。

とはいえ。
さすがに今春の新連載は、重い腰を上げるようで
次週は『無敵看板娘』の佐渡川先生
(『パニッシャー』は大凡作でしたねえwあれで懲りて
 日常に回帰するなら、まあイケるのでは)
そして1週目は、面白かった短期集中連載のうち一本
『ジョギリ屋ジョーがやってくる』をマイウェイに描ききった鬼才
フクイタクミによる『ケルベロス』というわけです。
秋口からずっと『弱虫ペダル』が絶頂期で頑張ってくれている今
追随する作品群を用意できなかったら、殆ど犯罪です(大袈裟)。
秋は全力ですっころんだので、今度こそうまくやってもらいましょう。

と、いうわけで。
前置きが長くなりましたけど…
この『ケルベロス』が
とても、とてもいいですね、というお話。
『ジョギリ屋』のイメージからはガラッと変身、
連載用の王道契約ヒーローものにシフトしつつも
地力はしっかりと感じさせてくれます。
ジョギリの時は手塚短編なんかをイメージしていたのに
連載となると、『うしおととら』の
藤田和日郎っぽかたりもして、未だに底が見えません。
この才能、大事に育てて欲しいものです。
ダーツで簡単に打ち切っちゃダメよ~。

さて『ケルベロス』ですが、ちゃんと計算がある上で
感情も乗っていて、スバラシイ一話でした。
『ジョギリ屋』という作品は、説明を放棄した作品というか…
『そういうものだ』という
言い切りで押し切るエネルギーがある作品で。
それはそれで、味わいがあって良かったのですが
さすがにそのままで新連載は難しい!という事になったか
今回は、まず感情移入対象である主人公の
戦う理由、動機を詰めよう!としたのでしょう。
そこで

「絶対に負けられない戦い」とはどんなものか?

という問いかけをガッツリ行い、
突き詰めるあたりが、凄いなと。
巷では某サッカーがらみで大量に消費された言葉ですが
この作品の主人公、十三塚景は基本「非暴力不服従」
・・・って、そう書くとガンジーみたいでなんか違うな(笑)
一応殴って、逃がして、怒りの矛先を全部我慢してやり過ごす、と。
ともかく、自分の望みを通すには
力は要らない、という事に気付いていた。
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これは、間違った主張ではありません。
特に現代社会では、そう。
この平和な社会で、力がなくても守り通せる事は、沢山あります。
かなり不器用な生き方ですが、
それで景がこれまでの生きてこれた事自体
「強さなんかいらない」の1つの証明になっている。

しかし、その上で。
力がなくても守ってこれた何年もの日々を、前提とした上で
「力がないとどうにもならない」状況をドカンと置いてくる。

つまり
「絶対に負けられない戦い」なんて、殆どない。
↑これを前提条件で出してくるのが凄い
しかし同時に
「絶対に負けられない戦い」は、
誰にも、必ず、確実に、どこかで、ある。
それが彼にとって「ここ」だった、という話。

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この、長年己を形成してきた価値観を
絶対的な力、というものでぶち壊される衝撃。
魂レベルから「力が欲しい」と望む気持ちが
読者の胸にも迫ってきます。
今『デビルマン』のような物語を描くなら
このレベルまで、強烈に動機を詰めないといけない。
その事を理屈で詰めながら、感情で押し切った
すばらしさ。
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墓守となる事が今後何を意味するかなんて、関係がない。
今まさに大切な幼馴染の命が消えようという
彼にとっての「是非もない時」、その説明を遮ってまで
性急に「力」を望む。それはそうでしょう。
自分のこの先を案ずる事なんかより大切なものが、この世にはある。

思い出すのは『コードギアス 反逆のルルーシュ』第一話。
銃口を向けられたルルーシュが、自らの終わりを感じ
「ナナリー…!」と叫んだ、あの時と同じような
魂の底からの力への渇望を感じ、心が震えました。
しかも、景の場合、ルルーシュ以上に諦めず
ケルベロスの声があろうがなかろうが、突っかかったでしょう。
まさにこれこそが、少女を守る少年に必要なモチベーション。

「力がなくてもそこそこやれちゃう現代で、
敢えて力を欲するってのは、
ここまでいかないと、嘘だ!!」

というフクイ先生の叫びが聞こえてくるようです。
昨今、ここまで主人公の動機が「離陸」する事に対し
血反吐はくような一話を組む人は、いなかったですねえ。
物凄い、厳しい自覚です。感服しました。

第一話、62Pという事で
贅沢を言えば、敵を滅ぼすあたりまで
描ききって欲しかった感はありますが、
じゃあ前半を詰めたらどうなるか、というと
最も大切な、景の動機
そこに関わる、ヒロイン友恵との絶妙な空気が削がれるだけなので…
基本はやくはやく!な僕も、今回は望みません。
大切なのは景の生き方の確認と、友恵との空気。
この女は俺が守らなきゃ、という実感。
その2つが達成されているので、言う事ない一話でしょう。
これが、現代のヒーローマンガに求められるテイクオフだ!!
なんかもう、あんまりにも気に入ったので
他の良かった部分も書いておきます。

・画

感情の乗った線入りまくりの画がある一方で
手癖ですが何か?みたいな、ラフな表情画なんかもあって
物凄い起伏。
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…の時の友恵の描き方いいです、力感なくて。
メリハリが効いてるんですよね。
全編濃い筆致だと、暑苦しいですし。

・呼び方
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回想シーンでの呼び方は
景「友恵」
友恵「景」
なのに、本編では
景「鶴原」
友恵「十三塚君」になっていて…
でも、観ていてわかる通り、疎遠になったわけではない。
これは思春期を経て、距離が余りになさすぎた
幼馴染の異性と、男女としての関係を再構築するにあたっての
ステップなんですよね。細かい!
呼び方は距離をとっても、大切さは変わっていないという…
それが互いにとってそうだ、というあたり
キュンキュンします。

・ありがとうよ
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実は物凄く好きなコマ。
ここで「ありがとうよ」って書ける人、
藤田和日郎先生以外にいたんだなぁ…
まあ、あの人だと「ありがとよう。」か(笑)。
もう、このコマだけで2人の関係が滲み出てきますよね。

・タダおかねえぞ
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それ以上友恵に何かしやがったら
タダおかねぇぞテメぇ!!


タダ「じゃ」が無いのがねぇ。
人が本当に激昂した時って、こんなもんでしょう。
そしてお互い危機的状況になって
呼び名が「景」と「友恵」に戻っているという

・・・・・・・・・・・・おわあああああああああ!!!
(発狂している)

素晴らしい作家の、素晴らしい新連載第一話です。
よし、チャンピオンよくやった!秋は許す!
残りの連載もしくじるなよ!
僕はチャンピオンを贔屓します!←

この記事へのコメント

kenken
2010年01月08日 23:01
>バキやドカベンを表紙にした、保守の香り
それも実は誤解なんです。
去年のチャンピオンで、ドカベンは1度だけしか表紙になっていません(それも、特別読切と2本立てだった週です)。
弱虫ペダルは5回も表紙になり、バキの6回とたいして変わりませんし、他にも表紙になっている漫画は多いですよ。

とりあえず、最近のチャンピオンは表紙を飾れる漫画が増えたというのは間違いないはずです。
ルイ
2010年01月12日 07:54
kenkenさん、コメントありがとうございます。
ドカベンに関しては、正直自分でも
1回くらいしか思い出せない状態だったのですが
(画業50周年の時絡みでしたっけ?)
「敢えて」恣意的にああ書かせてもらいました(笑)
チャンピオン=バキ、浦安、ドカベン、というイメージの方が
マンガをあまり読まない知り合いに、物凄く根強いもので。

ただ、弱虫ペダルとバキの数がそこまで肉薄していたのは
全く気付きませんでした。情報ありがとうございます。
秋冬にかけての弱ペダ祭がおおいに影響しての事と思われますが
という事は、祭前までの1年の4分の3は
あれほど絶好調だったのに…
って、どうしても穴を見つけて文句言いたくなりますね(笑)。
まあ、弱ペダ祭というのは名実ともに
上記の3タイトル以外による、一ヶ月にも渡る
雑誌イメージの独占で。
チャンピオンにしては、大きな賭けだったでしょうし
それ自体はおおいに評価しているのですが
じゃあ、その弱ペダ祭で新たな顔登場!というイメージを吹き込んでいる時に、
肝心の秋の開始漫画はどうだったって

(以下愚痴)

…いや、それはもういいですけど(笑)
なんにせよ、イカ娘、みつどもえあたりも少しあったかな?
仰る通り、表紙になる漫画も出てきている。
じゃのめの梅田先生に表紙描かせてみたかったりもしますが
今、刷新の時期にあるのは確かなようですね。
頑張れ、チャンピオン!出口先生どこいった、チャンピオン!orz
八神健先生は増刊の後、エロ漫画で見つけたぞ、チャンピオン!orz
…頑張れ、チャンピオン!(笑)
2010年01月16日 23:10
いい記事を読ませていただきました。
これはすばらしいチャンピオン愛。

表紙はもう少し他の作品に回してほしいですよね。
ペダルが出てきたとはいえバキのイメージが拭い去れないのは、グラビアとバキが高確率で表紙にいるからなんですよね。
それらがいない時、どれだけ売り上げに変化があるか窺い知ることは出来ないので無責任にやれ表紙はあれにしろこれにしろと言うのもどうかなとは自分でも思うんですが、
せっかくANGEL VOICEであったり、風が如くであったり、じゃのめであったり、またはアニメ化のみつどもえ、表紙栄えするイカ娘といった作品、他にも面白い作品が沢山あるのですから色んな作品に表紙を与えてほしいです。
もちろんケルベロスを含めた新連載攻勢も。

本当にがんばれチャンピオン!
ルイ
2010年01月19日 21:42
乙さん、コメントありがとうございます。
チャンピオン愛…漫画愛のつもりではあるのですが
どうしてか、チャンピオンにはこういう感情が混じりますね(笑)。
言葉にするとストレート過ぎてナンですけど
「ダメな子ほど可愛い」というか(ほんとストレートだw)
「苛立ち憎しみ転じて愛となった!」みたいな。
実際、個々の漫画がその出来に比例した評価が与えられている印象がないので
理想論とはいえ「同じ少年漫画という括りで、評価したってよ!」みたいに思ってしまう…
判官贔屓ホイホイなのかな、この雑誌は(笑)。
しかも、それが対他雑誌に限った話ならまだしも
同じチャンピオン内でも、面白いのに未単行本化作品があったりと、もう
内憂外患を地で行ってる(笑)そこが逆に、熱血マンガのスタート地点のようで
「僕らこんな問題ばっかりの部でしたけど、全国に!」
というサクセスストーリーの、
まさにスタート地点のように見えるのかもしれません。
(そのもの、エンジェルボイスみたいだ…)
実際『ドールガン』とか大好きでしたし
ふと、みどろさんの「イケてるわ」とか
『サイカチ』の「鍬形道」「ブリーダー鉄の掟」というステキ過ぎる響きが思い出されたり
妙に愛着はあります。おそらく、少年漫画誌全チェックを再開した数年前の
『ドールガン』と、言われて読んだ『バロンゴングバトル』が、なんか心の根っこに働きかけてますね。

表紙に関しては仰る通りで、部数増減のデータありきとは思います。
ただ、個人的には「守る時期ではないだろう」という気持ちはありますね。
部数もジリ貧のような数字ですし
今必要なのは、5年前あたりとは違うんだ、と
イメージレベルから宣言する事なんじゃないか、と思っています。
タマ揃ってきてるんだし…。
うーん、判官贔屓だ。

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