マガジンSPECIALの戦略~咲香里と『杉丸と少年』~

普段から、少年漫画を愛読してはいます。
しかし、さすがにマガスペ
(マガジンSPECIAL)まで押さえてはいない。
ジャンプサンデーマガジンチャンピオンだけで青色吐息。
ヒッヒッフーヒッヒッフーです。
そんな自分が、何故今回手を出したか?
それは勿論(?)表紙にデカデカと載っている通り
週刊少年マガジンで『スマッシュ!』連載中の
咲香里先生が読みきりを描いた、という事でして。
それ目当てでした。

今現在、週刊少年マガジンのスポーツ漫画は、
いやマガジン連載作品全体で観ても
『ベイビーステップ』で決まりだな、とは思っているのですが
スマッシュ!も時折面白い展開を見せる事があり
無関心ではありません。
「挫折」の挟め方に結構味、哲学?或いは人生観?
そういったものがある気がしていて
サンプルが色々欲しいな、と思っていたのです。
スマッシュ!の主人公、翔太も
いざ天才として覚醒する、って時に靭帯やっちゃいますし
すんなりいかせないモノがあるのは何故なのかしら、と。

で、実際読みきり『ぼくらの泣き虫先生』も
ここで盛り上がる!ってところで
しっかり試合には負けているわけで
「ああ、やっぱり咲先生はこうなのか」と
それなりに感じるものはあったのです。
現実の成功と関係の成功を直にイコールで結ぶ事に
自分で疑問をもつタイプ、なのかも…。
物語としては、そこをすんなりリンクさせた方が
単純なカタルシスが増す面もあると思うのだけれど
ここに1つクッションを置きたがる
辛酸感覚があるのですよね…。

というわけで
咲先生の読みきりを読んだよ☆
めでたしめでたし♪

と。なるはずだったのですが
そうは問屋が卸さない。
そこで完結しないさせない持ち込ませない(?)
マガジンSPECIALの恐るべき戦略に
数分後気付き、慄きました。

なんと、新人漫画家の
しかもバドミントン漫画を、同じ号に掲載してきたのです!!
作者名は「滝口将人」、作品名は「杉丸と少年」。
これが例えば、新人らしくまだまだ未熟で
「フフン、まだまだだなぁ…さすがに咲先生はちげぇや」
と、当代随一の(ほぼ唯一の?w)バドミントン漫画家
咲香里先生の為の当て馬だったなら、話は簡単。
しかし実際の所、
「杉丸と少年」は、かなーり面白かった。
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少年「大地」の憧れたバドミントン選手「杉丸」。
偶然出会った杉丸に、大地は憧れを吐露するが
その杉丸は同じ杉丸でも、全国ベスト8止まりの
「弱い方の杉丸」だった。
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大地の憧れの「強い杉丸」と試合をさせてやるべく
強い杉丸と試合をする杉丸。
その試合を見て、大地は真に自分が憧れたものに気付く。
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プロット自体に特別斬新なものは感じないけれど
(杉丸なんて特徴的な苗字の他人がいる、って事への説明もないし。
まぁ、連載構造にするなら兄弟なり親戚なりにしちゃえばいいか)
そのプロットに、ちゃんと中身を込める為に必要なものが
殆ど備わっているなぁ、といいますか。
プロットだけに終わらない、要素要素の纏め方が
大変しっかりした作品なのでした。

例えば、憧れを「継承」にしてみせたこと。
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杉丸自身にも憧れた人がいて、そんな風になりたい…という
動機をしっかり配置する事で、少年と少年(杉丸だって少年ですよね)の
小さな話にとどめず、もっと一般的な
憧れが憧れを生み、次の憧れへと繋がっていく、という
人の継承譚としての形式を纏ってみせている。
杉丸の憧れた選手の顔を描かず、とにかく背中で見せているあたりも
この読みきりにはその人は関わってこない、と宣言する意味でも
また、杉丸にとっての彼の偉大さが容姿に全く関わらないという意味でも
まったく正しくて。
それは同時に、大地少年の「杉丸違い」にも説得力を与えている。

強い杉丸と弱い杉丸、正直
髪の毛レベルからして全く似ていないのですが(笑)
大地の年齢が小学生という事もあり
また全中というある程度大きな大会、大きな会場で
遠巻きに観れば仕方がない?という情状酌量の余地もあり
加えて「杉丸」という苗字が特徴的すぎるあまり
最初から観ていた杉丸と、最後の杉丸を
イコールで繋げてしまった事に、それほどの違和感がなく
(弱い杉丸が負けた時は、トイレにでもいってたんじゃね?w)
↑ある意味唯一の瑕疵。まぁ読み込んであげましょう
しかも上記の通り、
杉丸の回想時・憧れの選手の姿が背中
=プレースタイルのみに集中しているのだから
同様に子供である大地の視点も「そう」であろうという
理由付けになっている。

バドミントンも単なるマイナー競技狙い(失礼)
というわけではなく、ちゃんとバドミントンならではの
仕掛け・理でもって試合を組んでいるし
その勝負を分ける「気付き」のきっかけは
杉丸から見た大地の未熟さが
実力は違えど、強い杉丸から見た杉丸の未熟さだった
…という事に気付いたから。
大地とちゃんと試合をしてあげた杉丸だからこそ
気付くキッカケを得られた=大地がいたからこそ勝てた
…ここもメチャクチャわかりやすい。
冒頭の大地のラケット回し遊びが
杉丸健太(弱い杉丸)のものだった、という点も含めて
本当に、完成度はかなり高い。
画も背景も、演出もしっかりしているし
最近の漫画賞って、ここまでレベル高いのでしょうか…
まぁ、曽田正人先生なら「もっと突き抜けたものを描いて!」
とか言い出しそうな気もするんですが(笑)
少年の憧れる表情とか、この人ならではのものもあると思うので
素直に今後が楽しみでもあります。

とにかく、予想外の掘り出し物なのでした。
この辺、マガスペの戦略が見事。
咲香里という人を、悪い言い方をすると「ダシ」に使って
滝口将人という人の才能を見せてきたのですから。
バドミントン漫画の代表を表紙・読みきりに招聘して
そこで新人の、負けないくらいのバドミントン漫画をぶつける。
編集部のニヤニヤ笑いが見えてくるかのような、見事な二段構え。
咲香里につられてホイホイマガスペに飛んできたら
杉丸と少年にパクッ。
これぞまさに、同ジャンル漫画の食虫植物やー。
マガジン・ウツボカズラ・SPECIALやー。

いや、大変素晴らしかったです。
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オマケ
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監督も可愛いから少年誌でもいけるよ
可愛いよ監督かわいいよ←色々言って結局それか

物語に置いて必要なパーツが杉丸2人と大地少年だから
杉丸の憧れも含め、名前を徹底的に廃してるんですよね。
この女監督も、名前があっても何もおかしくないのだけれど
情報は殆ど存在しない。
読みきりだからこその視点の集め方ですね。
ああー、しかし監督、年齢いくつなんだろ…可愛いなぁ(笑)。
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唯一気になったのは、ここでしょうか。
大地に「おばさん」といわれた事に対し
監督、ノーリアクションなんですよね。
ここは「おばさん!?」とキレて最初の般若顔をもう一度押すもよし
もう照れちゃってカワイー、なんてことを
フキダシ外で言わせてしまうのもあり。
このあたりを全くしていないので
監督は「おばさん」を平然とスルーした
=どんだけ大きいの、この女性!?という
演出には、一応なっているんですけど…

多分、名前を用意しなかったことと同じで
主要3人、もっと言えば2人ですが
そこに視点を集める為、他での遊びを避けようと
意識しまくった結果、ここまで排除しちゃった、とか
そういうものだろうと考えています。
でも、連載ならここは
女監督のキャラをあげていく、演出ポイントですからね!
お願いしますよ、滝口先生!!

※いや、別に連載しないと思うけど(笑)。

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