『ささめきこと』3巻 その3~朱宮くん復権の可能性を探る~

純夏と風間の関係を大きく動かし、物語に背骨を通した
途中参加キャラ、ロッテちゃん。
しかし、彼女の登場によって
思い切りワリを食ったキャラクターが一人…
それはもちろん、女装少年朱宮くん。
朱宮くんの3巻での存在感の薄さ、いや無さといったら(笑)。

純夏と風間に関わる上でのロッテちゃんの特徴は

・A~純夏の歩んできた「そのまま」に好意を持っていること
・B~風間も認める「可愛い」女の子であること(ちょっとヘンだけど)
・C~ただしそれが、恋愛感情ではないこと


このあたりにあるわけですが、
風間から観て可愛く(B)、純夏のあるがままに好意を持つ(A)
という点を見れば、朱宮くんと同じ。
朱宮くんは

・A~純夏の「そのまま」を可愛いと思っていること
・B~風間も認める「可愛い」女の子になれること(笑)
・C~それが恋愛感情であること


こう。
ともに風間に想われ、純夏を想うという
純夏→風間→○○→純夏という
円環を作るうえでの「○○」役として設計されています。

朱宮くんが完結性の高い読みきり時(1話)には登場せず
連載用の「構造」になった途端(2話)
さっそく登場したキャラ、という時点で明らかですが
この位置(上記の「○○」)は、純夏と風間の固定化された関係を
揺り動かす為に生み出されたキャラクターが収まる場所。
まず連載用に関係を作り直そうとした時に、“3人目”が必要と判断し
実質連載第1話ともいえる2話目で既に朱宮くんを出したあたり
かなり自覚的に、考えて設計する作者さんではあるのでしょう。

しかし実際にその役目を受け持ったのは、
朱宮くんではなく、ロッテちゃんでした。
朱宮くんの出番が減った矢先の、ロッテちゃんの出現。
その役割などを考えても
ロッテちゃんが、朱宮くんのアレンジバージョンである事は
ほぼ疑いのない部分だと思います。
朱宮くんがもっと上手に動けたなら
ロッテちゃん自体、登場する事はなかったのかもしれませんね。

ただ勿論、朱宮くんとロッテちゃんは完全に同じ存在ではないので
一方にはできてもう一方にはできないこと、というのもある。
そこをどう捉えるか?というのが今回のポイントで…言い換えれば
1・ロッテちゃんは朱宮くんの転生体
と見るのか
2・ロッテちゃんは朱宮くんの分裂体
と見るのか、という違いが…え?よくわからない?(笑)
まぁ、それぞれ見ていきましょう。

1・ロッテちゃんは朱宮くんの転生体

朱宮くんの役割は全てロッテちゃんが受け持った、という見方です。
この見方でいくと、朱宮くんとロッテちゃんの違いは
うまく動かなかった朱宮くんを反省しての、アレンジした結果という事になり…
朱宮くんがエラく報われない存在になってしまいます(笑)。
前回、ロッテちゃんは純夏のこれまでを肯定する為に登場した、
と書きました。でもそれって、朱宮くんが
2話でそうそうに行おうとした事なんですよね。
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但し、純夏にはまるで真意は伝わりませんでしたっていう…(笑)。

1巻感想時に触れましたが、「かわいい」という
言葉のセレクトがマズかった。
その言葉を使ってしまったら、純夏と風間の間に横たわる
“カワイイの壁”についての話になってしまいますよね。
本来必要なのは、純夏に「カワイくなくても、いいんだよ」というか…
そのままのあなたが素敵です、という話で。
実際朱宮くんもそういう事が言いたかったハズ。
ただ、つくづく、言葉のセレクトがマズかった(笑)。
マズかったというか、ある意味では最も純夏が欲しい言葉ではあるのですが
…朱宮くん、純夏の心を読みすぎたよ!君はいい人すぎた!orz
それは風間に言って欲しい言葉だから、口にした瞬間
言った当人はハジかれちゃうんだ!(笑)
また、朱宮くんと純夏の接点が弱いのも理由のひとつにあるでしょうね。
純夏の中身を知りえる場所にいないので、何を言っても上っ面になってしまう
→せいぜいかわいい、しか言葉がない、という状態。
このあたりの反省を活かして
画像

ロッテちゃんは純夏をかわいいとは言わないし、同時に
空手という接点を作る事で、純夏を認められる下地を作った。
しかも恋愛感情を持たせない事で、純夏と風間の2人の物語に集中させ
自分を三角関係の一角にすら置かないという、見事な職人芸。
ああ朱宮くん、キミの失敗(失礼)データが
ロッテちゃんという成功作を生み出したんだ!
ありがとう朱宮くん!
さようなら朱宮くん!
…連載作品では往々にしてよくある事とはいえ
やっぱりエラく報われない見方だ(笑)。

2・ロッテちゃんは朱宮くんの分裂体

こちらの見方でも、
ロッテちゃん=朱宮くんが本来受け持つはずだった役割を
代わりにこなす為に生まれた、という主張自体は違いありません。
違うのは、朱宮くんの役割の一部、という点。
だからこそ分裂、という表現にしました。
朱宮くんからロッテちゃんがパージされました!
まだだ!まだ(朱宮くんは)終わらんよ!っていう…
邪悪な魔人ブウ出しちゃった後のふっくら魔人ブウみたいな?(笑)
そんな出がらし朱宮くんとしての可能性を追う、ポジティブな見方です。
ポジティブな割に出がらしとは失礼な表現ですが、まぁポジティブなんです。

この場合、純夏の肯定という役割をロッテちゃんに任せた今
朱宮くんに残る、朱宮くんだけにできること
…女装、ですよね。女装少年であるということ。
女装なんて特殊設定のせいで
百合好みの読者からはじかれたんじゃ、とすら思っているのですが
お陰でオンリーワンの存在ではある。
そしてこの作品で、男性が掘り起こし可能な物語といえば
これしかありません。

・朱宮ちゃんは可愛いが、男の子である。

・でも可愛いよ?「可愛い男」なら風間はいいのか?
 言い換えるなら、何故男ではダメなのか?

という部分を動かせるのは、朱宮くんだけだと思います。
「風間は可愛い女の子が好き」という作品の根幹をなす設定で
ずーっと物語は「可愛い」の部分に着目してきました。
それを「女の子」の部分にシフトチェンジさせられるのは、朱宮くんだけ。

これは、同性愛ものでは定番すぎるテーマだからか
多くの作品では省略されている気すらするのですが
(女子校を舞台にするのが、典型的な省略方法でしょうか。
 女性しかいない環境に場を純化することで
 女性が女性を愛する事自体への外部からの指摘を遮断する)
異性を愛するのではなく、同性を愛するようになったことに
理由を求めるなら、朱宮くんほどうってつけの存在はいません。
前回話題にした部分
B・風間は何故、「可愛い(女の)子」が好きなのか

の、(女の)の部分を顕在化し、問う役回りということです。

※実際は、全てに理由があるとは限らない部分ではあります。
 性同一性のように、「だってそうなんだもの」
 と言ってしまえばそれまでですからね。

いわば、風間の動機の解体を究極レベルまで行う気があるのなら
ようやく、朱宮くんに唯一の使い道(酷)がありますよ、って事なんですよね。
さて、この作品が女性が女性を愛する事、という部分にまで到達するのか。
それは読んでみてのお楽しみ、ですね。
ただ前回(女の)と、若干弱めな記述をしたことには理由があって
やはりこの作品は、ずっと「可愛い」を軸に、価値観のすれ違いでもって描いてきていますし
それで十分作品たりえているんですよね。
確かにジャンルで言えば「百合もの」なのでしょうが、描き方、手法としては
「青春恋愛もの」の枠組みをさして踏み越えていない、
百合ものの作法で描かれているようには思えない面があります。
(百合好きの人が観たら、また違う意見もあるかもしれませんが…)
だから、風間が女の子を想う理由を追求しなくとも、作品は成立するでしょうし
そこは純夏同様「好きになった人が偶々女の子」でも無理ではない。

ただ、純夏は好き=風間という直通一本なので
好きな人がたまたま風間=女の子、という納得をしやすいけれど
風間の場合は可愛い女の子全体に目星つけてるからなぁ…(笑)。
やっぱりここも、「可愛い」同様風間の動機をしっかり詰めた方が
作品自体のトータルな出来が上がる部分だとは思いますね。

つまり!
物凄く作品の志が高い場合だけ、朱宮くんの存在は
物語の中、よみがえるわけです!(笑)
よみがえれ、よみがえれ、よみがえれ、朱宮~♪
そんな頑張れ朱宮くんアピールをしつつ(いや、その方がドロドロして面白くなるので…)
今回はここまで。

オマケの1~世界はそんなにやさしくない~

今回、朱宮くんが活躍するには、作品内の
「女性が女性を愛する」という、
社会的にはまだまだマイノリティといわざるを得ない嗜好について
踏み込むか次第だ、という話をしました。
実際、作品がそこまで描くかは保留状態ではあるものの
ただこの作品を少しフォローすると、直接的にそこまで描かなくとも
柔らかに、淡々と
「世界のやさしくなさ(寛容ではない部分)」を描いていて
そこは好感の持てる部分です。
それは「女子部」の友人カップル、朋絵とみやこでもって
静かに描かれている部分でもありますし…
何より風間の回想シーン。
画像

これまで風間を誘い続けた女の子たちが、
昼食時、画面右側の方にいて彼女をハブにしている。
うん、デフォルメまじえてコミカルに処理はしているけれど
やさしくない。ちゃんと「同性愛はおかしいと思う視点」が残されている。
純度を高めるには内圧を高めること、とはよくいったもので
抑制のない所に秘める美は生まれないんですよね。
それはタイトル「ささめき」の話でもあるし、美観「恥」の話でもあるし
それはつまり「萌え」の話でもある。恥のない萌えなんて…!
ここの視点があまりに用意されていないと、逆にあけすけすぎて
ひいてしまいますよね。ヌーディストビーチでは興奮できない、みたいな

※基本的に僕は比喩センスが皆無です

コホン。とにかくこの辺、作者は確保できてる=わかってる、と思える部分です。

※そもそも、作品舞台が共学というあたりが既に「始まり」に思えますね。

オマケ2~色々言ったけど~
このブログは声優・高垣彩陽さんを応援するブログですので
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このシーンの芝居が見られるだけで楽しみなんだよね!
ふりしぼれ、あやひー!やいのやいの!
ああん?配置とか役割とか構造とか
             /)
           ///)
          /,.=゙''"/   
   /     i f ,.r='"-‐'つ____   
  /      /   _,.-‐'~/⌒  ⌒\
    /   ,i   ,二ニ⊃( ●). (●)\
   /    ノ    il゙フ::::::⌒(__人__)⌒::::: \
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