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zoom RSS 週刊少年サンデー『マギ』作家テーマの成長・「孝士どの」の先へ

<<   作成日時 : 2010/09/17 02:44   >>

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週刊少年サンデーで好評連載中の『マギ』。
『すもももももも』(以下『すもも』)の大高忍先生が、
前作では影すら見せなかった「世界」の輪郭を描いている、
スケールの大きな作品です。
ただ、そうはいってもこの作品は大高先生にとっての
心機一転、ゼロからの作品というわけではない。
あくまで『すもも』から地続きの流れがあって、
連載初期の時点から『すもも』と通じる部分が
多々見られた作品でもあります。
現在バルバッド篇の終盤は、もう一人の主人公とでも言うべき
アリババ少年が大活躍していますが、ここに
『すもも』以来のテーマの完遂と、その「先」が見える気がして
最近の展開が大好きです。

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海洋都市国家バルバッドの王子だったアリババは、
かつて離れた母国に、様々なものを手にして戻ってきて
今、国を変えようとしている。
彼が手にしたものとは、一体なんでしょう?
形のあるものとしては、迷宮を攻略した事による
精霊ジンの金属器。
実際バルバッドの王の間に乗り込む上で、
この力は必須でした。
形のないものとしても、同じく迷宮攻略による
「俺は迷宮攻略者だ」という見えない自信が
今の行動力の源泉となっている面もあるでしょう。

ただ、何よりアリババが手にしたものというのは
「アラジン」で間違いがない。
迷宮を攻略したのもアラジンあっての事なら、
迷宮を攻略した事によって得た
力や宝の使い道を示したのも実質アラジン。
アリババは、アラジンによって
生き方のラインを再整備されたわけです。

アラジンがアリババについて持っている印象が、
アリババの実像よりも大きい、立派なものだったとしても。

本当に大切な人が信じた虚像は、
当人にとっての実像になっていくし、実像にしたくなる。
相手に恥じない自分、
その人が「ある」と言ってくれた自分は
きっと「ある」…そういった感覚。
これは、アラジンが特別な「マギ」だから、というよりは
もっと万人に通じる、大高世界の真理のようなものです。
連載第一話、元盗賊のライラと隊商の娘サラサ
少女2人のエピソードから始まりましたが、
あれはアラジンとアリババの変奏曲。
誰もが「君はこんなものではない、君ならできる」と言って欲しい。
自分にとって大切な人がそう言ってくれるなら、
どこまでも変わっていく事ができる。

ここで安直に

大高先生が漫画家を目指した時
同様の誰かがいたか、或いは逆に
自らは孤独な漫画志望だったことで
(彼女自身の過去紹介によると、こっちっぽい)
そんな人がいたなら、という切望が
テーマとして昇華されたのだ


…なんて言い切るのは、思い込みの危険性もあるし
あくまでいち妄想にとどめておいた方がいいとは思いますが、
しかし。事実として『すもも』『マギ』と、大高忍作品は
その「今ある自分以上を信じてくれようとしている誰か」
という物語が根底に存在し続けている。

『すもももももも』は、主人公犬塚孝士が
九頭竜もも子に「孝士どのはもっと凄い」という
ある意味での虚像を延々と信じ続けられ、
そこに最終的には応えてやろう、
そんな自分になってみよう、という物語でした。
アラジンとアリババの関係との類似点は多々見受けられます。

ただ、あの作品の特異な所としては
とにかく、孝士どのが延々とその気にならなかった。
物語の95%以上はもも子から孝士へのアプローチで
孝士がその幻想に乗ろう、その幻想を本当にしてみよう、と動くのは
最後の最後。
明確に「誰か信じてくれる人の為の自分」というテーマがあるのに
その「先」が全くと言っていいほど無い作品でありました。
変われる、変われると言って「変わった後」がない。
それは作者的な想像力の限界なのか、とも思いましたが
取り敢えず最近の『マギ』で
その部分は鮮やかに突破してみせたように思います。

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サブマド兄さんは絶対に臆病者なんかじゃない。
勇気ある人なんだ!!


副国王サブマドは、誰がどう見ても「臆病者」であるように描かれています。
彼が霧の団のアジトに赴きアリババに事を打ち明けたのは
究極レベルに追いつめられてからの、なけなしの勇気を振り絞った
例外的な一回に過ぎない。
ところが、アリババはそこを掬い上げて
「それがサブマドの心性だ」と言っているわけです。
アリババとて、サブマドとの付き合いが短いわけではなく
当然サブマドの弱い所なんて知っている。
なのに「絶対に臆病者なんかじゃない」と言ってのける感覚は、
そう、そのままアラジンに貰ったものを、他の人に受け渡しているのです。

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どちらも「絶対に」と言っているのは、決して偶然ではありません。

実際は「そうでない面」があるのは明らかであるとしても、
ここで心の底から「絶対に」と言ってのけてみせたら
言われた側はどうなるか?
…それはもう、心が震えるでしょう。
そんな風にまで言わせてしまった事に申し訳なさや感謝を入り混じらせ
とにかく、少しでも「そうあろう」とするでしょう。
言ってくれた人が大切な人なら、認める人ならなおのこと。
つまり、ここでアリババはアラジンから得たものを
次の相手に引渡したのですよね。
誰かから何かを得た、という事を証明する最もわかりやすい手段は
その得たものを、そのまま次の人に届けてみせる事。
その瞬間、世にわかる形で「継承」はなされる。
『すもも』では辿り着かなかった境地に、あっという間にたどり着き
そしてアリババは、王政を捨ててまで国を救うという「勇気」を形にしている。
アラジンとも共に過ごした、砂漠のオアシスでの日々から
共和制の可能性に気付き、その日々をもアイデアにする事で肯定している。

大切な人から貰った「絶対に勇気のある自分」という像を世界に顕在化させ
同時に、次の対象に「絶対に勇気のある人」を伝えていく。
サブマドも、いつか誰かにこの言葉を言うでしょう。
誰かの為に変わる、というと、自発性の乏しさでもって
鋼の意思を持つ人と比べれば、どうにも貧弱に映るのは否めない。
けれど、そのやり方でしか辿り着けない人と
そのやり方だからこそ受け継がれる想いがある。
実はこのエピソード、単にアリババがカッコ良いだけではなく
『すもも』を一歩踏み越えていった証明となるエピソードなのでした。
そしてそれは、大高忍という作家が
自らのテーマに対して、まっすぐに向かい合っている事の表れでもある。
連載開始時からわかっていましたが…『マギ』、踏み越えていきましたね。
素晴らしいです!巻数少ないし、今からでも『マギ』を読もう!

マギ 5 (少年サンデーコミックス)
小学館
2010-08-18
大高 忍

ユーザレビュー:
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呟いているので、気軽に話しかけて欲しいのですが
基本漫画は週刊少年チャンピオンを呟いています(笑)。

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