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zoom RSS Phantom 〜Requiem for the Phantom〜 25話「決着」 一回性と決める事

<<   作成日時 : 2009/09/19 05:56   >>

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※今回はトラバ記事というよりガチ感想気味です。

時が過ぎる。

ブログにもあるとおり
Phantom 〜Requiem for the Phantom〜も残す所あと1話。

僕は今、最も優れたTVアニメーション作品は
『イナズマイレブン』だと本気で思っているのですが
それとは別のところで、原作の宣伝のみに堕する事が増え
アニメーションそのものの中で、起承転結すら疎かにする…
そんな作品が増えた中、真っ当に半年・2クールという期間を
「はじまりから終わりへの半年間」としっかり位置づけ
それをここまで粛々と実行してきたPhantomを、高く評価しています。
あ、原作の宣伝をする事が悪い、と言いたいわけではなく
それのみに満足し、それのみに終始する作品に
美しさを見出せない、という話です。

その価値観でもって、Phantomは美しい。
舞台で幕が一旦下ろされ
黒子が懸命に背景を動かす、その幕間の時間を
総集編エピソードで表現した、構成の妙。
サイス=マスターが言うまでもなく
Phantomという作品を「舞台」に見立て
舞台を最高の形で終幕まで導こう、という力強い意志。
脚本家がずいぶん多かった割には、本当に良くやった。
例えばガンダム00がなく、黒田洋介と虚淵玄だけによる脚本だったなら
どこまで到達できたのだろう、と見果てぬ夢も描きたくはなりますが
そんなIFに過剰に頼る必要もないほど、
このPhantomはPhantomで素晴らしかった。
…まだ1話残っていますが、そう言い切っていいと思います。

今回の25話「決着」は、キャルの(そして美緒の)決着の物語。
虚淵玄さんは、ゲームテキストでは内心描写も饒舌な方ながら
アニメの脚本を描かれる場合、逆にメディアの違いを意識するのか
むしろ内語はすくなめ。
かなり圧縮気味、詰め込んでスピーディな脚本を描かれます。
ゆえに、そのスピーディさの下地となる各キャラクターの心情が
詰めきれていないと、ずいぶんポンポンと展開だけが進むな…
という印象を持たれるのはないでしょうか。
ですから、彼1人に全話の脚本を預けるのはちょっと恐ろしい気もします。

しかし本作では、ポイントポイントの「動く」回だけを担当している。
6話「大火」は若干オリジナル重視の、Phantomの
一般的な倫理観における「赦されなさ」の強調でしたが
18話「対決」、そしてこの25話「決着」は
いかにも展開を決める、動の一話。
そこを彼に任せて、他の脚本回でもって
キャラクター達の心情を積み上げていく。
その積み上げを担保に、虚淵さんは全力でキャラを動かす。
いわば虚淵さんの担当は、引き絞られた弓を、適所に放つ仕事。
そこで原作にも存在した、力のある・印象に残るセリフが意味を持つ。
黒田洋介さんが担当回を決めたのでしょうから
このあたり、脚本家・虚淵玄の特質を見極めた適材適所。
構成・黒田洋介の形には見えない優れた仕事と評価します。


Phantomは恋愛ゲーム…というと若干の違和感がありますが
形式として、異性による分岐が存在するゲームが元にある。
しかし、その生まれの時点で
ある程度「一回性」を強調した物語でもありました。
下地としては、反復性(0からの繰り返し攻略)が強調されすぎた
恋愛ゲーム、PC18禁ゲームの歴史というものを土壌に
その形式を纏いながら生まれた鬼子、
カウンター的なものが、Phantomのような
反復性の形式でもって一回性を強調した作品群なのでしょう。
まぁ、今回恋愛ゲーム史みたいなものを眺める気はないので
ザックリ程度で次に進みますが…
もうここは前提レベルの話で、
皆が皆共有して欲しいものだったりもするのですが
現実そんなに簡単ではありません。
いまだにネットでピンとこない感想を見る事があるのなら
(○○ルートー、○○エンドー、みたいな)
まず、その人が
Phantomを一回性の物語と認識しているのかどうか?
を確認してみるといい。
往々にして、そういう人はスタート時点で別のものを見ています。

かつて、Phantomのゲーム版を遊んだ事がありますが
実は、1回しかクリアしていません。
わかる人にだけわかる言い方をすると「モンゴル」のみです。
もちろん、全ての分岐ゲームに対して
そんなスタンスを取っているわけではない。
普通の、各々のシナリオを愉しんでください、という
恋愛ゲームに関しては、時間と意欲さえあれば完全クリアします。
あと、苦手なキャラならクリアしないかも(笑)
その辺、普通の遊び方だと思います。
(ダ・カーポ2PSはどうすっかなぁ…理屈と関係ない個人的な事情で
音姫以外を選ぶ自信がないんだよなぁ…w)

それは、それぞれの選択・シナリオに
強烈なまでの一回性、唯一無二の道を感じる事がないから。
反復ゲーなんだな、と理解したなら
無いものねだりはしません。
たとえ対象がPhantomだとしても、最初に選んだルートが
何らかの外的な事情で別のルートで、
しかもそのルートに一回性を感じなかったとしたら
繰り返して遊んだかもしれません。

ただ、その一回のプレイに満足してしまったら。

つまり、意志と偶然のブレンドが選びとった1つの結末は
数多く用意された分岐ゲームにおける、1つの可能性でしかなく。
だからこそ全ての分岐先にはCGがあり、
盛り上がりがあり、
良さがある。

その事が、頭ではわかっていたとしても、
そこに運命を、必然を見出してしまったら。
いや、見出してしまいたくなってしまったなら
心はそこから動かなくなる。

それは、現実と同じものを見てしまうからなんですよね。
ありえた可能性の中、今至った「これ」を
ほかの分岐を選ぶことで、平行世界の1つと位置づける事は
現実を越えた、超越者の選択になってしまう。
ゲームでは、確かにそれは赦される。だからこそのゲーム。
でも、それを否定したいくらい、
1つの物語を受け容れたくなってしまったら
プレイはそこで終わる。
もしもその後再度プレイしたとしても、その時は既に
テキストを読んでみたい、CGを集めたい、といったような
打算的な研究意識であって…心は前のルートで止まっている。

そしてPhantomというゲームは、伝え聞く所では
例えば誰かに沿った物語を選べば、それに関わらないものは
あの過酷な世界の中で、報われない最後を迎えるという。
僕の選んだただ1つの物語も同じです。
様々な幸せの形が共存しない世界。
1つを選ぶことは、それ以外を切り捨てることと同義。
Phantomという銃弾の飛び交う
人の命の際を描く舞台でもって、虚淵さんは
そんな「ただ1つの物語を選ぶこと」を強調したのではないでしょうか。
その強調を、綺麗に平行分岐してしまえる
ゲーム世界で行うというのが、
若干の矛盾を孕んでいるようにも思いますが
同時に、小説やアニメのような一本道の世界より
一回性を強調する前段階としての
反復性を強調しやすいというメリットもあり…一長一短ではあります。

今回描かれたのは、そんなお話。
「今回、キャルを助けるという選択師はなかったのか」?
「キャルが不憫だ」?
そうだけど、そうじゃない。そんな物語じゃない。
言い出してどうする、という話でもあります。
ありえた可能性を、夢くらいでしか赦されないものと受け容れ
今選びとった1つの物語を、たとえそれが最善でなくとも、
他に様々な果たしたい物語があったとしても
これのみが自分の物語だ、と受け容れる。
受け容れるというより、半ば決め付ける。
生きる為に決め付ける。
それが今を生きるという事、と言いたいのでしょう。
それをこの苛烈な舞台でもって表現したいというのなら
描かれるのは、この生死をもっての形であるしかない。

とにかくそういった、ありえた可能性の中
1つを選ぶという行為、それに伴う
複数の可能性から、ただ1つの今をこれと見定めること。
このへんを真正面から描いたので、素晴らしい回でありました。

車に乗るレイジとキャル。永遠のような一瞬の白昼夢。
観たのは誰か…おそらく、両者ともに観ていたのでしょう。
それくらいのロマンチックさは、いいんじゃないでしょうか。
「夢の中くらい」は。

レイジが選びとったその物語は、全てが彼の意思による
選択が導き出したものではなかったかもしれない。
というか、それはありえない。
そんな人間、世界にいないのではないでしょうか。
クロウディアの思惑、サイスの目的
そしてキャルのいたアパート爆破の時彼を襲った
冷静さを遥かに上回る「失った」という実感。
※今回、車中の夢で2人が
 「そそっかしいミス」「ありえない」と言っていましたが
 (良い指摘だ…)
 現実、その瞬間瞬間の選択は
 そんなそそっかしさ、ありえないミスによっても行われてしまう。
 視聴者が「キャルの生死をまず確認しろ!」と
 いくらつっこんでも仕方がない。
 玲二がその時、キャルと幸せな日常を歩む自分、というものに
 違和感を覚えていて、爆破を見た時
 自分の為してきた行いに自覚的(かつ否定的)であるがゆえに
 「これが自分の世界だ、自分があんな幸せを得られるはずがなかった」と
 「こんなの嘘だ!キャルは生きてる!」よりも強く感じてしまったのなら
 第三者のツッコミなんて何の意味もなさないし
 現実はそんな選択の繰り返しです。

様々な偶然や、ありえない失敗が導いた今。
けれど、今を生きるには
その今こそが自分の運命・必然だ、とするしかないですよね。
最後の最後に玲二が選び取った、運命という名の偶然の産物。
あとは「大火」をはじめとした、彼らの行為が生み出してきた
様々な宿業、因果と
ただこれと見定めた「運命」とがガチンコでぶつかりあうのみ。
最終回…泣いちゃうかもしれないですねぇ…。

ホント、素晴らしい回だったのですが
一応はキャルの為の回なので、彼女に注目すると…
酒場でジュディ、リズィ、そしてその酒場で
オルゴール早撃ちで殺された、名もない男…

え?徐 建法?(EDクレジットより)知らんがな(笑)

えーとそうそう、徐さん(笑)。
彼らの幻を生み出したのはキャルの内心ですから
彼女自身、この日々の先に対する
疑問や不安もあったのでしょう。
(徐がジュディやリズィといった重要人物と並び
 ここで召還されたのは、彼こそが
 彼の幻影=キャルの内心が口にした
 「生きた証も、生まれてきた意味もなく消えていく」
 の象徴だから、ですね。徐さん酷い扱いカワイソスw)
一方でそんな幻を必死で否定するキャルもいる、という事は
彼女自身が矛盾を抱えているということ。
これまでの育ち、そしてツヴァイ=玲二との別れがもたらした
「喪失」というものに対する過度の怯えが
力による略奪者となり、相手を喪失させることで自己を守る
という欲求に繋がった。
一方で、その奥底には結局の所
玲二に対する思慕の情しかなかった、と…。
江漣との決闘場所である教会にたどり着いた時
バイクを燃やしたその心情は、
意味のある生を生き続けたい、とも望む彼女からすれば
彼女自身にも説明できなかったのではないでしょうか。
しかし背反する感情の1つは、確実に
玲二がいればいい、この選択、この今において
玲二を取り戻す術はないが
アイン(江漣)を殺す事で、それが愛でなく、憎悪であったとしても
玲二を取り戻す事ができる、それが全てだ、と
思っていたのでしょうね。自覚はなかったでしょうが。

まぁ、結果的には教会には玲二がいて
玲二が己の器量でもって、キャルを受け止めてくれたお陰で
キャルは真に
「今、玲二を自分のものにした」と感じられた。
これが相手が江漣の場合、話はここまでわかりやすくはならない。
きっと玲二はアタシを恨むだろう…とか。
その程度の推測でもってのみ満たされるという、哀しい話になる。
玲二のケジメの付け方は、確かにキャルの苦しみへの
答えであるのでした。
早打ちの勝敗を分かったのは、キャルの逡巡というよりは
玲二の生への執着だった、で良いのではないでしょうか。
逡巡を強調したいなら、そういう演出の仕方がありますからね。

それにしても、僕らは声優の演技を評価する時
どうしても個別評価考えてしまいがちだけれど。
アフレコ現場全体に漲る緊張感があれば
この回のようになるのでしょうね。
1人の演技が1人の演技を高め、それを繰り返していく。
誰が、ということもなく
素晴らしい演技の数々でした。
表情の作画も抜群、音響の入れ所も抜群。
素晴らしい。放映前からの期待を上回ってくれました。感謝。


余談ですが
恋愛ゲームを手がけていた岡田磨里さんが
一本道の物語を書きたい、とアニメーションに進んだ、と
以前何かで読んだ時、物凄く納得したのを覚えています。
その感覚を持つ人がtrue tearsを書くのは、極めて理解できる。
一回性に飢えた、という事でしょうから。

そして、そんな人のそんな物語なのに
まだ乃絵ルートだ誰エンドだって人
いい加減やめてくんないかなぁ…(笑)

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